2000年 2月上旬の日記
▲2月1日(火)▼
SFオンライン賞の投票をやっているが、推薦作リストを見て大笑いしてしまった。私ゃ、長編をぜんぜん読んでいないのだ。ゲームをやってないのは嗜好の問題だから仕方ないとしても、映画も見ていないな。時間がないからねえ。みんなよくあれだけ読めるものだ、と思いますねえ。けっきょく、中短篇とコミック部門くらいしか投票できなかった。やはり、私は薄々の一般人なのである。
今朝も熱っぽい。測ってみると37度あった。今日も午前中は休むことにする。妻子は起きてこない。昨夜は息子が熱のせいで「だっこお」と母親を7〜8回起こした(本人談)ようだからねえ。カミさんが起きてこないので、ゴミを出して保育所に休む旨の電話を入れ、朝食を食べる。
今日は息子を耳鼻科の医者に連れていくことにする。いつも行っている医者の薬が副作用が強いわりに効かないのである。息子は昨夜から「おなか、いたい」と言っていたのだが、食欲はあるし腹痛を訴えるのは酷い咳をした直後なので、筋肉痛だろうと判断した。カミさんもノドの痛みが鼻にきたようだというので、いっしょに行くことにする。
今日はまた1ヶ月ぶりに自分の会社に行くのである。先月分の出張の伝票を書かねばならないのだ。往きの電車の中で「夜が明けたら」の「葎生の宿」を読む。うーむ、これはちょっと荒唐無稽すぎるなあ。
会社近くの書店で「異形コレクション14 世紀末サーカス」と「彗星パニック◆SFバカ本」を買う。久しぶりである。帰りに「世紀末サーカス」の芦辺拓氏「天幕と銀幕の見える場所」を読んだが、私にはあまり面白くなかったな。乱歩とか、ああいう時代の探偵小説が好きな人には受けるのかもしれないけど。
今日もカミさんの機嫌が悪い。涼介「受」のオンリーに落ちたらしい。申込書が向こうに届いていなかったらしいから、主催者側の手違いじゃないんだからねえ。こういうことで家族に当たられてもねえ。同人活動から足を洗ってくれれば、かなり家庭内が平和になるのになあ…と思ってしまう今日この頃であった。
▲2月2日(水)▼
今朝も体調が悪い。掛け布団を2枚被っているのに寒くてたまらない。カミさんが息子を医者に連れていくために玄関を出る音を聞きながら、布団の中で、ただ丸くなって過ごす。カミさんがSOSして、お義母さんが来てくれた。有難いことである。
今日も仕事を休んだのだが、何度か職場から電話がかかってきた。まったく気の休まる暇がないのである。
▲2月3日(木)▼
起きると、カミさんが同人誌の荷造りをしていた。けっきょく、オンリーイベントでは、主催者に委託販売してもらうことになったそうだ。宅配便の会社に電話して取りに来てもらうようにしていたが、「3時まで待ってられない」ので近くのコンビニに持ち込むことにするようである。かなり辛そうなので、私がコンビニまで持っていくことにする。体温も私が37.4度でカミさんが38度近いらしいから、私のほうが低いしね。そう言うと、彼女は「サンデーとマガジンとモーニングも買ってきて」と言ったのだった。
コンビニに行くため着替えに寝室に入ると、息子がむっくりと起き上がった。私が荷物を持ってゆくときには息子は外には連れ出せないので彼の相手はカミさんがやると言っていたのだが、布団の中の彼女に「どうする?」と訊くと「お願い」と応えられた。息子の相手もできないような体調でも、同人誌の荷造りはできるのか。恐るべし、ヤオラーの執念。
カミさんの体温は39度を超えたらしい。私は息子の相手をしているので荷物を出しにいけない。ただ、彼は最初から母親がいなければ母を恋しがることはないので楽である。イベントのときと同じだな。14時を過ぎてしまったので、息子を連れて荷物を出しに行くことにする。帰りにスーパーに寄ってパンを買ってきた。家に帰って食事をしようとすると、息子は納豆も買い物カゴに入れていたのを覚えていて「なっとう、たべる」と言い張る。説得不能なので、けっきょく納豆でご飯を食べたのだった。
しかし、店頭で納豆を選んでいて思ったのだが、みんな「遺伝子組み替え大豆は使用しておりません」と書いてあるな。そのかわり、「無農薬栽培」と書いてある納豆が減ったような気がする。遺伝子組み替え大豆を使っていないことがよい商品の条件だということになってしまうのは、個人的にはとても怖い。みんなが遺伝子組み替えの危険性に向いているときこそ、農薬の問題を忘れていない発売元の商品を買いたいものである。
息子は今日も昼寝をしなかったので眠いはずなのだが、寝るのを嫌がる。着替えるのも身体を拭くのも嫌がる。何とか着替えさせるが、眠くて上手くできないのでまた怒る。手伝おうとしても「じぶんで!」と言ってさらに怒る。ああ疲れた。キミといると、父ちゃんの病気が治らないよ。
▲2月4日(金)▼
今朝も微熱が下がらない。咳も相変わらず酷い。今日も会社を休んで、内科の医者に行くことにする。だが、ここでも「喉が腫れてる」と言われただけである。
今日もお義母さんが手伝いに来てくれた。重ね重ね、有難いことである。
▲2月5日(土)▼
今朝はテレホタイムのうちに起きてインターネットする。でも体調は相変わらず悪い。咳が出て、37度台の熱がある。一昨日買ってきたパンの残りで朝食を済ませる。
昼過ぎになって妻子が起きてきた。カミさんより私に、フレンチトーストを作れとの命令である。彼女が昨日買ってきた菓子パンがパッケージも開けずにそのまま残っているんだけどなあ。それを言うと「あとで食べるわよ」と言われる。食パン2枚分作らされたが、妻子二人で食べても半分近く残ってしまった。炭水化物と脂肪ばかりの食事だなあ。体調が悪いんだから、もう少し栄養バランスがいいものを食べた方がいいんじゃないかと思うのだが、本人が「これが食べたい」というのには逆らえないのである。
カミさんは座椅子の上にダラッと伸びてテレビを見ている。息子が寄っていくと「重い」と言って邪険に扱う。「そんなにしんどいなら上で寝てきたら?」と言って寝室に上がらせる。最初から母親がいなければ、彼も父親と二人でも大丈夫なのである。カミさんの熱がまた39度を超えたらしい。今年の風邪は、なかなか治らないねえ。
息子がフレンチトーストを食べてから2時間近く経ったので、昼食にする。私がご飯と納豆を食べていると、息子も欲しがる。2〜3口食べさせて「まだ納豆要るか?」と訊くとうなずいたので、息子の分のご飯と昨日の残りの豚汁を用意して彼の前に並べた……ところにカミさんが尋常でない様子で下りてきた。まず一言「…病院に電話して」と言う。「いくら水分をとっても…顔と頭から…汗が出ないの。身体が火照って…体温調節ができへん」などと切れ切れに話す。私は病院とタクシー会社に電話して着替えようとするが、彼女は一人で行くという。インフルエンザの子供とかも来てたらしいから、体の弱っている息子を連れていかなかったのは正解だったんだけどね。だが息子は、母親が着替えて出かける用意をしているのを見て「でんしゃ、のって、いく」と言いだす。彼女が出ていくのを見送ったときも、一緒に行くと言って泣きわめく。玄関のところで泣いている彼を放っておいて私が居間で食事を再開しても、廊下のところまで来てずっと泣いている。彼はもう食事どころではない。
まだ息子が泣いているときにお義母さんから電話がかかってきた。状況を話すと、来てくれるという。有難いことである。そのうちにカミさんからも電話があった。「毒にも薬にもならないことしか言われなかった」そうである。まあ、ああいう症状は内科の医者には難しいだろうからねえ。
今日も息子と一緒だったので充分休めなかったな。けっきょく、昨日カミさんが買ってきたパンは、今日も食べられることなく残っているのであった。
▲2月6日(日)▼
今日はカミさんが早起きして息子の世話をしてくれたので、昼過ぎまで寝ていた。目が覚めると、横に息子が寝ている。冷えピタを額に貼っている。また熱が上がったのか。私も相変わらず咳が出て熱っぽい。起きて体温を測ると37.1度あった。さすがに明日は仕事に行かねばならないのに、どうなるんだろう。
▲2月7日(月)▼
今朝、体温は36度台前半に戻っていた。これなら何とか仕事ができそうだ。だが、相変わらず咳が酷い。もう少し休みたいのが正直なところだが、客先には1週間行っていないので仕方がないか。
カミさんと朝食を食べていたら、階上で寝室の戸が開く音がした。息子が起きたようだ。カミさんが手が放せないようなので、私が迎えに行く。しかし、彼は「おしっこ」と言いながらも私が「下りるか?」と言うと「おりへん」と応える。「オマルでするんか?」と訊いても「かーちゃんと、する」と言って私が近づくのも嫌がる。けっきょく、カミさんが迎えに行ったのだった。
往きの電車の中で「異形コレクション14 世紀末サーカス」を読む。石田一氏「我は伝説」は、まあまあ面白く読めたが、1本読んだだけで疲れてしまった。あとは、目を閉じ、丸くなって過ごす。
今日は、それほどトラブルは起きなかった。リハビリである。休んでいた間に起こった問題点の整理などをして一日が過ぎた。
帰りの電車の中で「世紀末サーカス」の続きを読む。まず太田忠司氏「黒い天幕」だが、私にはこういうのはまったく怖くないんだよな。次の倉阪鬼一郎氏「夢の中の宴」も、私には意味がよくわかりません。次の草上仁氏「頭ひとつ」は、なかなか凄かったですね。…あああ、いつにも増して気の利いた感想が書けない。頭に浮かぶのは、面白かったかどうかだけなのである。かなり、知的パワーが落ちているな。電車を乗り換えて奥田哲也氏「砂の獣」を読む。なかなか読ませてくれたが、オチがイマイチかな。これは「異形」にしない方がよかったんじゃないだろうか。
今夜は遠方の客先から家に帰ったので、帰宅したのは22時を過ぎていた。しかし息子は起きていた。なんだか、異様に元気である。しかし、カミさんは今日も荒れている。本人も体調が悪いときに、病気で家にいる息子の相手をするのは相当にこたえるようだ。そういうときには、息子を追いつめるような怒り方をしちゃうんだよねえ。3歳児に、母親を怒らせないように対処しろというのは無理な話である。
▲2月8日(火)▼
一家全員で咳をしている。コンコンというような生易しいものではなく、ゴンゴンと肺腑を震わせて咳をしているのである。ああ、ツライ。
今日は職場に行く前に医者に行く。薬が今日で切れるのである。医者から帰ると、体温が37度まで上がっていた。しかし、仕事に行かないわけにはいくまい。風が強い。雨も降り出した。大粒の雨粒が家の壁を叩いている。雨の止んだタイミングを見計らって家を出る。
往きの電車の中で「異形コレクション14 世紀末サーカス」を読む。まず山下定氏「たまのり」であるが、これは独特のムードで楽しませてくれた。次の江坂遊氏「マイサーカス」には、特に感じるものはなかったな。
移動途中で寄った難波の本屋で「ダブル・キャスト」(高畑京一郎:電撃文庫)を見つけた。即決で上下巻とも買う。いやいや、やはり上手いですねえ。息をするように、とまではいかないが、歩くぐらいの感覚でどんどん読めてしまう。ちょうど、帰りの電車の中で家の最寄り駅についたときに上下巻を読み終えることができた。「タイム・リープ」と同工異曲なので、ちょっと点が辛くなるかな。
電車から降りると、雪である。真っ暗な夜空から次々に落ちてくる雪の中、黙々と家路を急ぐ。今夜は昨日よりも一電車遅かったのだが、息子は起きていた。玄関に入ると、彼が階段を下りてやって来た。「ぬれてる」「あめ?」などと言っている。「雪やで」と応えると「ゆき?」と声を上げる。降ってるのを知らなかったのか? 「つめたい?」と訊くので、上着に付いている雪を示して「ほら、雪」と言うと、指で触ってはしゃぐ。異様に元気である。まあ、元気なのはいいことだ。
▲2月9日(水)▼
目が覚めると、絶望的に気分が悪い。昨夜は早めに寝たし、夜中に咳が出なかったのでよく眠れたはずなのだが。酷い咳をすると吐きそうになる。ヤバい。やっとの思いで小用に起き、カミさんに起きれないことを告げる。昨日から薬が変わったせいかなあ。
トイレから見ると、隣の駐車場に停めてある車の上には雪が積もっていた。息子に見せれば喜ぶはずなのだが、そういうことも思い浮かばないほど気分が悪いのである。
休んでいると、部下にも仕事を与えねばならない。それに加えて、今日は職場からいろいろと問合せがあったりするので、FIVAを広げて仕事のデータを見たりする。これじゃ、在宅勤務だよな。
カミさんが昼寝をしている間に日記を書いていたら宅急便が来た。出版社からである。小説Wingsで「対なる者」シリーズの著者サイン本プレゼントをやるそうなので、そのための本だろう。
ずっと寝ていたのだが、カミさんの怒鳴り声と息子の泣き声で目が覚めた。居間に下りていくと、またカミさんが息子を邪険に扱っている。彼がくっついてくるのも鬱陶しい、そうである。かなりストレスが溜まってるのね。スキンシップさえ嫌がるとは。
▲2月10日(木)▼
今日も気分が悪い。身体がだるくて起きられない。息子も母親に起こされているようだが、起きないようである。
今朝は息子が起きれなかったので、カミさんが遅れて保育所に行こうとしたら「今からだったら来ないでくれ」と言われたそうなんである。カミさんもかなりストレスが溜まっているようなので、電話をして預かってもらえないか交渉する。「お預かりするのが仕事ですから預からないことはないですけどね」とか言いながら、何だかんだと理由をつけて家で世話するように言う。「子供の発達が…」とか何とかグチャグチャ言っているが、ぜんぜん説得力がない。粘っていると、そのうちに「親の都合であっちこっちやられて、シンちゃん(仮名)も可哀想ですね」と言いやがった。私の頭の中で、何かがプッツンと切れた。「たまたま今日そうなっただけじゃないですか!」思わず声を荒げる。相手は「それじゃ、いつ来られますか?」と投げやりな感じで言う。その後も「食事の準備が…」とか言っていたが、強引にお願いする。「そんなことなら9時半までに電話してもらわないと…」とか言っていたとカミさんに言うと「話し中だったのよ」と言った。まったくもう。
保育所に電話をしている最中に、仕事で持たされている携帯に電話がかかってきた。トラブっているので昼からでも出てこい、ということである。うう、今日は休めないか。
仕事場に行く途中で寄った難波の本屋で「そばかすの少年」(ジーン・ポーター/竹宮惠子:講談社コミックス)を見つけて買った。前にも買った覚えがあるし、カミさんも持っていたような気がするが、それでも買うのである。前に買った本は実家に置いてあるし、自分の手元に一冊は置いておきたいのである。竹宮先生の作品の中で最も好きな話のひとつなのだ。身体はフラフラであるが、これを読めば元気が出るんじゃないかと思ったのである。体調も多少は精神に影響されるものだからね。こういう前向きな物語は元気をくれるのである。これが物語の力だな。
今日もいろいろ問題が出て、このプロジェクトを抜けた上司まで動員されていた。けっきょく、最終のひとつ前の急行で帰ったのである。遅くまで仕事をして、また体調が悪くなってしまった。しかし、電車の中では本を読むのである。「異形コレクション14 世紀末サーカス」の続きだ。藤田雅矢氏「暖かなテント」はあまり面白くなかったな。次の横田順彌氏「曲馬団」は読んでいて安心感がある。このあたりは個人的な好みの問題なのかもしれないが。続いて平山夢明氏「Ωの聖餐」を読んだが、なかなか凄い話でしたね。田中啓文氏のグロさとはまた違った味わいがある。次の高野史緒氏「パリアッチョ」も凄かったっすね。クラシックのことはまったくよく知らない私のような人間にも。
夜半過ぎに家に着いたが、玄関は内側から鍵がかかっている。ガレージも外側からは開かないようになっている。チャイムを鳴らしても、何の反応もない。電話をしてみるが、留守電になっている。それぞれ、何度か繰り返したが状況が変わらない。この季節にこの体調でこれ以上屋外にいたら、マジで生命の危険を感じる。これは、カミさんの実家に電話をしてタクシーで行くしかないかな…と思っていたところにカミさんが下りてき玄関をて開けてくれた…と思ったら、そのまま食事の用意もせずに寝室に逆戻りしてしまった。何か、怒らせるようなこと、しただろうか。胸に手を当てて考えるが、思いつかない…か思い当たりすぎる。それほど普段と違うことはしていないはずだが。しかし、家を出てからほとんど何も口に入れていないので、腹が減った。台所にあるものを適当に暖める。何だか、居間の様子が変わっている。かなり派手に掃除をしたようだ。そういや、今日家に来たお義母さんが「埃だらけで…だからシンちゃん(仮名)の咳が出るのよ」などと言っていたような気がする。だったら、お義母さんと掃除のことで一悶着あったのだろうか。なんだか、私の荷物のところが集中的に掃除されてるような気がするし。それで怒ってるのかなあ…などと、どんどん悪い方へ想像は膨らんでいくのである。
狼谷辰之 | 新書館*ウィングス文庫 |
対なる者の誓い |
¥620+税 | ISBN4-403-54021-X |
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