2000年 3月上旬の日記
前の日記へ
3月1日(水)
昨夜ネットサーフィンしてたカミさんが、三省堂書店の新書の週間ランキング木根尚子さんの「歯医者の領分」が24位に入っているのを見つけた。彼女がPHSでお祝いのメールを送ると電話がかかってきた。今夜も長くなりそうである。終わるのを待っていると、また眠ってしまっていた。気がつくと朝である。コタツに入っていたので寒くはなかったが、暑くて汗をかいていた。今日は月初なので伝票を書くために本社に行く日なのである。たぶん朝礼があるので9時に出社しなければならない。急いで家を出る。

通勤電車の中で「異形コレクション15 宇宙生物ゾーン」を読む。まず森下一仁氏「黒洞虫」であるが、設定自体はSFしててよいのだが、どうも展開が唐突すぎる。このページ数で宇宙生物と人間界の両方を描くのは無理だったんじゃないでしょうか。続いて谷甲州氏「緑の星」である。やはり巧い。端正なSFなのだが「どこかで読んだような話だなあ」と思ってしまうところがマイナスポイントだな。今日の最後は森岡浩之氏「パートナー」である。これもけっこう手垢のついたテーマだと思うのだが(前回の「世紀末サーカス」にも同テーマの作品があったし)、料理の仕方が巧いのでしっかり読ませてくれますね。ああ、SFって難しい。

今日は医者に行くということで早めに退社するのである。カミさんが本を探してきてほしいようなことを言っていたので本屋を何軒か廻って帰ってくるつもりだったのだが、体調が悪いので直接帰ることにする。どうも、風邪を引いたようなのである。前の風邪がまだ治っていないのになあ。午前中から寒気と節々の痛みは感じていたのだが、午後になってノドの痛みと熱っぽさが出てきた。普段はあまり高熱が出ないヒトなのだが、これはけっこうな数字が出てるような気がする。しかし家に帰ってカミさんと額をくっつけるが、向こうの方が暖かい。おかしいなあと思いながら、カミさんが息子を迎えに保育所に行った後で熱を測ったら39度あった。予想通りではあったのだが、体温計の目盛りが右の方までバビューンと伸びているのを見て、ちょっとビビってしまった。

しばらく休んで病院に行く。前回から呼吸器科のある病院に替わったので、ちょっと遠いがそこに行くのである。前回は電車で行ったがかなり時間的なロスが大きかったので、今回は自転車で行くことにする。高熱があって節々は痛いのだが、意識ははっきりしていて、けっこう元気なのである。しかし、漫然と東に向かっていれば着くだろうと思っていたのだが、それが甘かった。走っていると近鉄の車庫に突き当たってしまったのである。北に迂回しようかとしばらく走ったが、かなり続いているようである(当たり前だな。電車を並べておくところなんだから)。あきらめて近鉄線の南側から行くように航路変更するが、なかなか線路を横切る道がないのである。気がつくと、なぜか駅の構内を自転車で走っていた。ありゃりゃ、いつの間にこんなところに入り込んでしまっていたんだ。這々の体で駅を脱出し、かなり西方に戻って踏切を渡る。しかし今度は、川が行く手を阻んでいるのである。橋を探してまたどんどん南の方に下ってゆく。ずいぶん見当違いの方角に進んで行っている。橋を見つけたときには1km近く南に下ってしまっていた。目的の地に着くには、橋を渡ってまた北に戻らねばならないのである。けっきょく病院に着いて時計を見ると、家を出てから30分以上かかっていた。地図を見てから来ればよかったと真剣に思ったことであった。

この病院で診療を受けるには予約が必要だったようで、かなり待たされる。電話機が鳴った後「急患です。7●歳女性。階段から落ちて…」などという声が漏れ聞こえてくる中で、ソファに腰掛けじっとして待つ。けっきょく「風邪でしょう」と言われて、前回と同じ咳止めに加えて総合感冒薬を処方されただけだった。まあ、こんなもんでしょうけど、これだけのために重すぎる苦労をしてしまったなあ。さらに、帰るときに駅のすぐ南に橋があることを発見してしまったのである。そこを通ると10分で家に帰り着いてしまった。ショックは大きいのである。うがああ〜



3月2日(木)
今日は一日中寝ていた。起きたのは16時過ぎである。朝食も昼食も食ってない。体温は37.6度。まだまだ熱はある。ノドが痛い。ジュースを飲み込むときにも痛みがある。カミさんが息子を保育所から連れて帰ってくるのを待って、夕食を食べてまた寝る。1日のうち、20時間近く寝ていたことになるか。我ながらよく寝れるものである。まだまだ疲れは取れてなかったということなんだねえ。

夕食時に卵酒代わりにカミさんと二人でビールを一缶飲んだのだが、息子は我々が飲んでいるのを見ても以前ほどは飲みたがらない。それでも興味ありげにしているので、「苦いで」と言いながら渡してやると、ちょっと口をつけて「にがい〜」と言いながら返してくれる。かなり暗示にかかりやすいんじゃないかな。

もう彼は、トイレで用を足した後、便器の蓋を閉めてその上に乗り、水を流して手を洗い、掌を壁に突かずに床に下りてドアに掛けてあるタオルで手を拭くところまで一人でできるようになっている。もう、オシッコなら電灯を点ける以外は自分でできるねえ。



3月3日(金)
今日も体温が37度ある。仕事を休むことにする。とりあえず、部下への仕事の指示をメールで送って、あとはリハビリである。相変わらずノドが痛い。しかし、もう4日も日記を更新していない。そろそろ、実時間との乖離が1週間になろうとしている。日記を書こうとするが、日曜日に何をしたかぜんぜん覚えてないぞ。書くネタはいっぱいあったはずなんだがなあ。

カミさんが、部屋の隅に自分の本や小物が山を成しているのを見てつぶやく。
「あんなに片づいていたのに、どうしてこんなにモノが増えてゆくのかしら」
「生きてゆくってことは、モノが増えるってことなんだよ。特にオタクは
「そうね…シクシク」
う〜ん、至極当たり前のことだと思うんだがなあ。



3月4日(土)
朝起きて、久しぶりにヒゲを剃っていたら、玄関先にバイクが止まる気配がした。郵便受けに何か入れようとしているが、入れるのに苦労しているようである。ははあ、アレだな、と思う。郵便受けの中を覗いてみると、やはりアレであった。「虚無回廊3」(小松左京イオ)である。この作品は1〜2巻は単行本になっているが、その続きは雑誌連載のみだったのだ。私は薄々の一般人なので、SF雑誌までは買っていなかったので注文したのである。Webで状況を見ていると、1日に発送済みになっているのにまだ着いていなかったので「どうなってるんだろう」と、ちょっと不安に思っていたんですよね。開けてみると…おお、最初のページに小松先生のサインが入ってるのね。泣かせますなあ。ちょっと読んでみたが、やっぱり1〜2巻から読み直さないといけないと思って止めたのだった…って、いつになったら読めるんだ。まあ、1〜2巻も半日で読んでしまったからなあ。あのときはハードカバーは買わないという主義を破って1巻を買ったのだが、夜になって「寝る前にちょっとだけ」と読み始めたら止まらなくなって夜半過ぎに1巻を読み終えてしまって「うおおお、2巻を読みてえ〜」と叫びながら夜を明かして、そのまま朝一番で2巻を買いに本屋に走ったのだった。それを考えると1〜2巻を読み始めるのはある意味危険なような気もする。その後、当然のごとく文庫版も買い、カミさんが入院したときには持っていってハメたのだった。彼女なんか、最初の1行でヤラレてしまったらしい。あ、そういや、彼女が次に読むときには私が横について用語の解説をする、と言ってたような記憶があるぞ。

カミさんが本の形態を見て「同人誌だあ」とか言っている。値段を聞いて「高価い」とか言う。「これは注文生産だから…」と必死で説明するのである。これで、オプションで中性紙が選択できれば、値段がさらに倍くらいになっても好きな短編を1冊にまとめたのと「果しなき流れの果に」を注文して家宝にするのにな。とにかく、紙の酸化はオタクにとって最大の問題なのである。

いや、やっぱり凄い凄い。とてもじゃないが自分と同じ種の生物が書いたとは思えませんな。神狩りで「神の書いた文字」を見てしまった登場人物のような気分である。この広大な知識、問題意識、発想そして表現力…一つひとつは世界中探せば何とかなるかもしれないが、これだけトータルに融合して作品を創り出せる人間というと…しかし、凄いですよなあ。この眩暈がするような、アイデアと思想の数々。これがSFっすよねえ。しかも、ぜんぜん古くなってないんだよねえ。ハードウェアというか技術的な面では古くなっている部分もあるんですけど、思想とか思考の方向性という面においてはまったく古びていない。いや、むしろ最近の方が退歩しているんじゃにかと思えるほど。これを読んでいると、自分がいかに多くの影響をこの作品、いや小松左京という存在から受けているかということを思い知らされる。そして、ワクワクする、知的でエキサイティングな展開。凄いとしか言いようがない。思わず評価を5つ星に上げてしまおうかと思ってしまった。でも、4つ星なのだ。未完だから……あれ、何で私はいま読んでいるんだろう(爆笑)。けっきょく、今日一日はこのシリーズを読むことに費やされたのだった。

日記を書いていると、息子を保育所に送るために出ていたカミさんが帰ってきた。かなり浮かれている。「ふふふ、オイシイ展開だわ。『川原、ありがとー』って感じね(はあと)! 買ってきちゃったあ」とか言っている。海皇紀のことである。月マガを買ってきたようである。彼女は「海皇紀」の部分だけを雑誌から切り離して「寝ながらヤオイでも考えよ」と言いながら、寝室に上がって行ったのであった。



3月5日(日)
今朝は10時過ぎまで寝ていた。熱はないが、相変わらずノドが痛い。痰をノドの奥から吸い出すのも痛くてできない。薬は飲んでいるんだけどねえ。何とかならんもんかのう。目覚めたときには妻子はもう起きていた。居間に下りてゆくと、食事を終えたところだったらしい。私が食事の準備をしていると、図書館に行くと言って出ていった。

今日は独りで食事をしながらヒッパレを観る。小柳ゆきの曲はまだチャートに入ってますか。これを…安田祥子由紀さおり姉妹が演るんですかぁ。実力派ではあっても、ちょっとミスマッチなような気がするんだがなあ…などと思いながら聴いていたのだが、なかなか見事に演ってくれました。そういう点では、まったくタイプの違う実力派に演らせたほうがいいんでしょうね。そして、定年退職するカメラマンにこれだけスポットを当てますか。まあ、テレビの本放送が始まってまだ50年経っていないわけですから、興隆期を支えてきた人たちがそろそろリタイアする時期なんですねえ。そして、スペシャルライヴは知念ちゃんですか。あらら、バックのメンバーは…ひょっとして、ビジーフォーのフルメンバーじゃないですか。なんだか、すごく懐かしいですねえ。



3月6日(月)
今日は夫婦そろって寝過ごしたので、病院に行ってから仕事場に行くことにする(爆)。今日からまた1週間、遠方の客先に行きっぱなしなのである。病院に行くのは通勤電車とは反対方向なので、余裕で座れた。「異形コレクション15 宇宙生物ゾーン」の続きを読み始める。診察待ちの時間にも読む。遠方の客先への移動時間にも読む。しかし、移動中の電車では、例によって眠くなってしまったので途中からは寝て過ごしたのであった。まず岡本賢一氏「言の実」であるが、まあ、SFとしては水準作でしょうか。続いて山田正紀氏「一匹の奇妙な獣」であるが…私にはちょっと難しすぎる。今日の最後は梶尾真治氏「魅の谷」であるが、これはなかなか笑えましたね。男同士モノだったりするんだけど。

病院では、呼吸器科に行ったのだが、喉の腫れが最大の問題だということで、耳鼻咽喉科に回されてしまった。そこで、喉に軟膏を塗られてしまったのだ。初めての体験である。自分でも塗るように処方されたが、ちょっと不安なんだけどね。まあ、口内炎用の軟膏らしいんだけど。内服用としては、咳止めに加えて抗生物質を処方された。引き継いだカルテを見て「抗生物質は出してなかったのか」と言われた。まあ、安易に抗生物質を出さない医者のほうが信頼できるんだけどね。



3月7日(火)
昨日から抗生物質を飲んでいるせいか、喉の腫れはだいぶマシになってきた。ただ、ちょっと下痢気味である。別に腹痛とかはないからいいんだけどね(苦痛がなければ「下痢」とは言わないんだったっけ)。でも、私の持病は下痢から始まるので用心した方がいいだろう。前回の再発時にも強い薬を飲んだのが引き金になったみたいだし。とりあえず、症状が軽くなったので薬を飲むのは中止することにする。投与した側からいうと、症状が軽快してからも菌が無くなるまで服用した方がいいんだろうけどね。ひとまず抗生物質で叩いたので、あとは自前の免疫力で治すことにしよう。



3月8日(水)
今日も一日中仕事である。一日が短い。あっという間に真夜中になってしまう。日記のネタができない。う〜ん、昼休みに近所のスーパーで賞味期限間近のパンを安売りしているところを見つけたくらいか。これで、コンビニで定価のパンを買わなくてすむな…って、すごく貧乏臭いですね。

そういえば今日カミさんに電話したら、今日は息子は遠足に行ったそうで、かなりの遠距離を歩かされて途中でヘロヘロになったらしい。いつもは機嫌のいい彼が(外ヅラのいいヤツだ)愚図ったので、保育所の先生には印象深かったらしい。お昼寝の時間にはイビキをかいて寝ていたそうな。

今週はなぜかホテルが空いてなくて今夜は初めてのホテルに泊まった。ここは門限が24時なのだが、電話機が電話線から外せるのでその電話線をパソコンにつないで通信してみる。こりゃもうネット中毒ですね。いつも泊まっているホテルとはダイアル方法がパルスとトーンの違いがあった以外は、特にトラブルもなく接続できた。しかし、こういう設備だと電話機を持って帰る奴とかいないのかなあ。他人事ながら、ちょっと心配してしまうのだった。



3月9日(木)
最近、なぜかWindowsに付属しているソリティアにハマっている。先日、ヘルプファイルを読んでやっとルールがわかったのである。で、猿のようにやっている。数パーセントの確率でしかクリアできないと思うのだが、それでも、いやそれだからこそ止められないのである。なんだか、将棋で負け続けてアツくなっている状態に似ているような気がする。真剣師は、こういう状態にカモを追い込んで賭け金を巻き上げるんだよな。



3月10日(金)
今日は、今のプロジェクトの打ち上げなのである。ん、「打ち上げ」ってのは、全国で通用する言葉だったっけ。ま、要するにプロジェクト終了の飲み会である。今回はお客様も一緒なんですよね。これでは楽しく酒が飲めるわけがない。特にこういうプロジェクトでは。で、いつも迷惑をおかけしている部署の方が出てこられなくなったと聞いて、ちょっとホッとしている自分が哀しい(苦笑)。

今夜は遅くなるかもしれないので当初は泊まる予定だったのだが、飲み会の場所がJRの駅の近くだというので、家に帰りつける時間のうちに抜け出して帰ることにする。作業場所は私鉄の駅の近くなので、昨日まで泊まっていたホテルも私鉄の駅の周辺にあり、戻るのが大変なのである。上司はJRの駅近くに泊まればいいじゃないかというようなことを言っていたが、大きな荷物を持って移動しなければならないのは同じだし、ホテルを探すのが面倒臭い。それでJRで帰ったのだが、駅で運賃表を見るとどうもおかしいのである。この駅から大阪の環状線の駅までは快速で1時間近くかかるのだが、そこまでが830円で、そこから環状線に乗り換えて次の駅まで乗ると、いきなり1050円になってしまうのである。どうにも納得できない。これは途中で一度降りたほうが安くなるのではないかと思って830円の切符を買う。環状線の駅に着いたところで一度改札の外に出て、私鉄に乗り換える駅まで買うと、3駅分で120円だった。やっぱりちょっとおかしいと思うぞ。

今日は喉の調子が悪い。朝起きたときから扁桃に痛みを感じていたのだが、だんだん酷くなってきたのである。飲み会が終わる頃には唾液を飲み込むのも痛くなってきた。これは何とかしないとヤバい。電車の中で抗生物質を飲む。アルコールを摂取してしまっているのだが、そういうことは言っていられない。以降の電車の中では、ひたすら丸くなって過ごしたのであった。途中で快速に乗り換えられるはずだったのだが、それを確認する気力もなく、各駅停車で大阪まで帰ったのである。

家に帰り着いて居間でグッタリとしていると、階上から息子の泣き声が聞こえてきた。寝ないと身体が保たないので、そのまま寝るつもりで寝室に上がってゆく。しかし、息子は私の顔を見ると扉の外を指差して「とーちゃん、あっち、いって」と言うのである。どうも、眠いときは私が嫌いなようなのだ。「ここで寝るんやもーん」と応えると、彼は「とーちゃん、あっちで、ねて」と言いやがる。カミさんに「すぐに寝るから、それまで下りとって」と言われて、泣く泣く居間に下りたのであった。うるうる。

狼谷辰之  新書館ウィングス文庫
なる
¥620+税  ISBN4-403-54021-X



ホーム  日記の目次へ  次の日記へ