2000年 8月中旬の日記
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8月11日(金)
今日も実家で昼前まで寝ていて、ぐーたらと一日を過ごす。何もしなくていいので日記を書き放題だと思っていたのだが、なかなか書けない。やはりパソコンを持ち出して自分の世界に入ってしまうというのは、実家ではやりにくい。食卓の上にはいつも何か出てるしね。

今日も飯を食った後、息子を祖父母に任せて昼寝をする。ぐーたらである。しかし、しばらくして息子が泣きながら起こしにきた。「うんこ、でてしもーた」とか言っている。うにゅー、また漏らしたか。シモの管理は自分でできるようになったと思っていたんだがなあ…などと思いながら階下に下りてゆくと、彼の祖父母は二人とも寝ていた。ひょっとして、訴える相手がいなかったのか?

夜になり、今日も花火をする。花火の発するオレンジ色の光が細かく明滅し、息子の顔を、そして彼の祖父母の顔を照らしている。このひとときが、ここにいる者たちにとって、何とかけがえのないものであることか。

息子は、燃え尽きた花火を投げ捨てずにしゃがんで地面に置いている。そういうしつけをした覚えはないのだが、几帳面なことである。カミさんの実家あたりでしつけられたんだろうか。



8月12日(土)
今日は息子が祖父に連れられて海に行くらしいので、監視員としてついていく。地元の海岸なので、ほとんど人はいない。さすがにスクール水着の中学生はいないか(こらあっ)。ビキニ姿の茶髪のねーちゃんが二人で甲羅干しをしていたが、見ても何も感じないというのは危険かもしれないな。白い肉の塊にしか見えないのだ。ひょっとしたら、全部脱いでも興奮しないかもしれないぞ。セーラー服の裾がちらっと翻ったほうが萌えるというのは、やっぱり危ないかもしれない。

息子の祖父は「これがあれば溺れる心配はない」と言って浮き輪の底に網を張って紐をつけたものを持ってきていたのだが、息子をそれに乗せると網が張ってあるため上半身が水上に出てしまい重心が高くなって非常に安定が悪い。ひっくり返るとかえって溺れてしまうので、けっきょく息子は浮き輪なしで祖父に手を引かれて沖の方に歩いていく。遠浅なので、数十メートル先まで行っても水深は彼の胸までしかない。私は砂浜の上から監視している。PHSを持ってきているので、あまり深いところには行けないのだ。何かあったら浜辺に投げ捨てて救出に向かう心づもりである。見ていると、息子は頭をどぷんと水に浸けたりしている。ぜんぜん水を怖がってないね。キミはこういうサラリーマンより漁師の家にでも生まれるべきだったのかもしれないねえ、などと思ってしまう真夏の正午前であった。

見えるのは水平線とその上をゆく船、島影、そしてタンクの群れ。ここにいると、聞こえるのは波の音と、ときどき発せられる子供の声だけである。しばらく海辺にいると、頭の中が波の音のホワイトノイズで満たされていることに気づく。海辺のリゾートにはこうして頭脳を麻痺させる効果もあるんだろうな。ずっと遠くを見ていたので、目のピントもかなり遠くに合っているようである。考えてみれば、こんなに遠くを見たのは久しぶりだ。真夏の屋外にずっと居たので、家に帰って建物に入ると目の前が真っ暗になる。瞳孔が絞りきられているんだろうな。

家に戻り、息子を連れて昼寝をさせる。今日は素直に寝てくれた。さすがに疲れたか。そして、19時頃になって息子が「おちゃ、のみたい」と言いだした。階下に下りて飲ませるが、非常に機嫌が悪い。畳の上でゴロゴロしている。食欲も無い。けっきょく、夕食もほとんど食べなかった。あ、妙に腕がヒリヒリすると思ったら、日焼けしているぞ。紫外線よけを塗っておくべきだったか…と思っても、そんなものは持っていないのである。

私の親父がNHKの高校野球中継を見ているのを横から見ていて思ったのだが、ずいぶん佐賀北のマネージャーを大写しにしてますね。こんなに個人を特定してクローズアップすると、他人事ながらストーカーが出やしないかと心配になる。たしかに美人が祈ってたり涙を流してたりするのは絵になるのはわかるんだけれども。まあ、それを本人が望んでれば別なんだけどね。

今日も息子は彼の祖母と風呂に入ったのだが、彼は風呂場で泣きわめいているようである。台所で飯を食っている私の弟が「泣いてるで」と言っていたくらいである。昨日洗髪を拒否したので、今日は強制的に洗われて泣いているようである。脱衣場に出てきたら今度は父親が迎えに来ないというのでまた泣いているようだ。やはり疲れてるのかねえ。

息子が風呂から上がり、寝室に入って寝かせているところにカミさんからPHSに電話が入った。家に着いたようである。「で、ショックなことがあったの」とか言っている。私は「んー、何か本を買い逃したのか?」とか言っていたのだが、彼女が家に帰ると冷凍庫のドアが開いていたらしいのだ。そしてこの猛暑の中、中身がぜんぶ腐って腐汁が床に滴っていたそうだ。まるで巨神兵の崩れた跡ですな。「床を拭いたけど臭いが取れないの。張り替えなきゃいけないかも」などと言っている。まったくもう。ふだんから詰め込み過ぎなんだよ。



8月13日(日)
今日、実家から家に帰るのである。息子はそれを察してか、早くから「おうち、かえりたい」とか言っている。彼の祖父母は、今日は店が定休日だしもう少し孫と一緒に過ごしたいようだが、神戸の方まで行くのは辛いということだったので姫路に行くことにする。息子は電車に乗っているときはゴキゲンだったのだが、電車を降りて百貨店で彼の服を買ってもらってるときも帰りたいと言い続ける。早々に食事をして帰ることになってしまうのである。

山陽電鉄から阪神電鉄への直通特急に乗って帰る。座席に座ってから、JRの新快速にすれば交通機関が2つで済むから安上がりだし(と思ったが、これはそうではないようだ)、「かんじょーせん」に乗れるし、トイレがついているので安心だと思ったのだが、もう遅い。息子は電車の中で便意は訴えなかったが、梅田に着く前の駅あたりで眠ってしまった。梅田に着き「地下鉄に乗るで」と言って起こす。何とか起きてくれたのだった。

息子は帰る道すがら何度も「かーちゃん、まってる?」と訊く。いや、たぶん同人誌を読みふけっていて君のことなんか気にしていないと思うぞ。家に入ってもカミさんは出てこない。ほら、やっぱりそうだ。車も自転車もあるから出かけてはいないと思うんだが。そして、恐る恐る居間に入る。カミさんはいない。思ったより臭いはしないな。カミさんが帰ったときは「家に猫が入り込んで死んでるのか」と思ったほどの悪臭だったらしいのだが。どちらかというと、古い材木が水を吸った臭いがする。汚染物質はベランダに出してるらしい。洗濯物に臭いが付かないんだろうか。しばらくしてカミさんが下りてきた。ほうら、やっぱり同人誌を読んでたんだ。

そして、今日も予想通り外食である。疲れているから外で食った方が私も気が楽なんだけどね。経済的問題を別にすれば。実家でぐーたら三昧をしていたのになぜか胃腸が弱っているので、軽いもので済ませる。カミさんは帰りにコンビニに寄ってアイスクリームを買って帰るという。冷蔵庫が空になってるからねえ。しかし、私は胃の調子が悪いので食べられないのであった。

カミさんが「美貌の食卓」の原稿を別の文書で上書きしてしまってフロッピーもどこにあるかわからないと言っている。……いやいや、本当のことだとしても言ってはいけない。なんせ、8日の日記を書いたせいでイチャイチャさせてもらえてないのである。木根さんのところの青×赤の同人誌を読ませてもらったが…あれ、けっきょく木根さんのところにゲストした作品、ボツになったのか。今回の原稿でいちばん力が入っていた(ように見えた)のだが。

日焼け跡が真っ赤になっている。腕時計の下だけ白いのが異様である。赤と白で、なんだか白桃の表面みたいだな。痛いので、腕を湿布でグルグル巻きにして寝る。息子と寝ていると彼が「ここ、かい」とか「あせ、かいた」とか言うので冷房を入れる。私だけだったら平気なのだが、苦しんでいる息子を見るのが忍びない…というより、疲れているので寝入りばなに手を煩わされるのが嫌だったりするのである。「子供には冷房を使わせない」などと言っていたような気もするのだが、言行不一致なのである。



8月14日(月)
今朝は5時前に目が覚めた。起きて通信する。日記がなかなか書けない。モチベーションが落ちてきてるな。1年半以上だらだらと続けているし、夏になって体力が落ちていることもあろう。けっきょく上げたのは8時過ぎになってしまった。ちょうどその頃、妻子が下りてきた。息子は今日も調子が悪い。オシッコをしないと言って怒られて、泣く。咳をする。非常に苦しそうな咳である。ゲッホンゲッホン繰り返して、ウエッとかいっている。どうも様子が変だ。今日は保育所に行かせる予定だったのだが、大事をとって休ませることにする。そうとなると、妻子はまた寝ることになるのである。私も様子を見に行って、そのまま……

妻子が起きた気配がする。でも、起きられない。気がつくと13時である。いくら寝ても眠い。実家ではずっとぐーたらしてたんだがなあ。居間に下りると妻子が食事をしていた。妻子も起きたのは12時半だそうである。食事を終え、息子に「外に行きたいか」と訊くとうなずく。「電器屋に行くか」と言うと「うん」と応える。カミさんも郵便局に行くというので「どっちに行く?」と訊いたら「でんきやさん」と応えた。やはり出かけねばならないか。

今日は一般の価格調査をしたかったので、少し遠出して大きくて安い電器の量販店に行く。息子はいつも行く店と違うせいか、店に入るとすぐに帰りたがる。こらぁ、電器屋に行きたいと言ったのは貴様じゃないか。無理やり引きずって店内を歩き回り、パソコンのキーボードを触らせていたら馴染んできたようである。MDが5枚で780円は安いと思って買ったが、もうそれが標準の値段になってるのね。安くなったものである。昔は…とか書き出すと長くなるので、このくらいで止めておこう。

続いてその電器屋の近くにある大型のスーパーのビルに入る。まず息子はエレベーターに乗りたがるので3階まで上がって本屋に入り、絵本を読んでやってからエスカレーターで1階に下りて食料品売り場に入る。農協の野菜ジュースが1リットルで178円だったので3本買う。カミさんに総菜を買ってくるように言われていたのだが、帰りに別のスーパーに行くのもしんどいので、ここで買って帰る。

カミさんは体調が悪そうである。イベントから帰ってくるとこれだ。息子がじゃれついてくるのをはねつけている。気分が悪いので階上に上がってもいいかと訊かれる。息子のためにもその方がいいでしょう。夜になってスーパーで買ってきた総菜で夕食の用意をしたが、カミさんはちょっと箸をつけただけで、またすぐに寝室に上がって行ってしまった。息が荒い。これはかなり重いかな。

今夜は私が息子を風呂に入れる。脱衣場で服を脱ぎ、浴室に入りながら彼が訊いてくる。
「シンちゃん(仮名)、おとこのこ?」
「そうだよ」
「とーちゃんも、おとこのこ?」
「そう」
「いっしょ?」
「一緒だよ」
「なんで?」
「オチンチンがあるからな」
「いっしょ?」
「一緒だよ」
「かーちゃんは、おんなのこ?」
「(女の子という歳でもないが)そうだよ」
…これも、性教育といえるんだろうか。

息子の身体を洗って脱衣場に出し、身体を軽く拭いて「パジャマ着といてな」と言うと彼は「はいよ」と応えて一人で階段を上ってゆく。楽になったものである。今となっては、彼が自分では何もできなかった頃にどうやって風呂に入っていたかということなど思い出すのも困難になっている。

歯を磨き、薬を塗って息子を寝室に連れていく。彼は絵本を読みたがるが、電灯を点けてカミさんを起こすといけないので「お月さん、見に行こか」と言って南の部屋に連れていく。ちょうど雲の切れ目から丸い月が、ギラギラと言ってもいいような強さで輝いている。しばらく息子を膝の上に乗せて月を観た後、寝室に戻ったが彼はまだ絵本を読んでいないことを覚えていたのだった。「母ちゃんが寝てるから…」と言うと、カミさんが「ええよ、読んでやって」と言った。あら、起こしちゃったのね。息子に電灯を点けさせ、絵本を読んでやって寝るのである。



8月15日(火)
今朝は7時過ぎに息子がグズグズ言いはじめた。身体が痒いらしい。カミさんはピクリとも動かない。死体である。仕方がない、私が起きねばならないか。

今日はカミさん待望のゴミの日なのである。ベランダに置いてある汚染物質を出さねばならない。カミさんは熱で使い物にならないようなので私がやらねばなるまい。こういうときに限って…運のいい奴め。ベランダへのドアを開けた瞬間、悪臭が鼻をついた。わけの判らない虫たちがワンワン舞っている。よく見ると、2つある袋のうち片方から腐汁が滲み出している。うがー、「4重くらいに包んだ」と言ってたんじゃなかったのか。密封が不十分だったのだ。いい加減な奴め。これは、さらにこの上からポリ袋で包むしかないな。ポリ袋を持ってきて広げ、その上から汚物を袋の中に入れようとしたが、一抱えほどもある大きさなのでうまく入らない。持ってきたポリ袋の表面に腐汁が附着してしまったようである。うう、失敗か。息子が後ろから覗き込んで「ゆきだるまみたいやなー」などと言っているので「近寄るな!」と怒鳴ってしまう。許せ、息子よ。ここは危険なのだ。もう一枚ポリ袋を持ってきて、今度は上から被せることにする。何とか、腐汁を内部に閉じこめることには成功したようだ。それを持って玄関まで下りる。しかし重い。集積場まで運ぶのに腕が抜けそうになる。まあ、殻だけじゃなくて中身も入ってますからね。水分も充分に含んでいる。ゴミをすべて出し終えて家に戻ったとき、玄関に立ちこめる悪臭にげんなりする私であった。

今日は私の最後の夏休みである。今日くらいは息子に保育所に行ってほしいのだが、どうもパンツが足りないようなのである。先週、保育所の最後の日に下着はぜんぶ持って帰ってきて実家に持っていってしまっているし、実家からは彼のリュックに入れて3枚しか持って帰ってきていないのだ。実家に持って行っていた着替えは昨日宅急便で送ったらしいのでまだ着いてないし。持って帰ってきたパンツも、彼が濡らしてしまったので1枚しか残っていない。未使用のものがどこかにストックされてないかカミさんに訊こうと思ったのだが、彼女は熱があるようで布団の上でグッタリして反応がない。起こすのはマズそうだ。これは、今日も休ませねばならないか。ツラいなあ。

とりあえず行く準備だけはしておこうと思って荷物を整理していたら、彼の衣類の隙間からパンツが2枚ほど出てきた。ああ、これで何とか保育所に行けるな。夏休み最後の日くらい、自分一人で好きなことをしたいのである。悪い父親だ。久しぶりの保育所なので息子は愚図るかと思っていたのだが、素直に自分の鞄を持って家を出た。保育所に着いたが、さすがに閑散としている。人の姿がまるで見えない。園児はすべて1部屋に集められているようである。水着の準備をする余裕がなかったので今日はプールを休ませてもらおうと思っていたのだが、今日はプールはないそうである。ほっ、よかった。しかし昨日は「咳が酷いので休ませる」と電話したのだが、どうも彼は熱を出して休んだことになっているらしい。夕方はあんなに元気だったのにね。まあ、注意して見てもらえるからいいでしょう。

家に帰るとカミさんが冷やしうどんを食べながら通信をしていた。「残ったうどん、食べていいわよ」と言って寝室に戻っていく。私は高校野球を見ながら通信をする。PL学園と明徳義塾は好カードだと思っていたのだが、かなり実力に差がありましたね。バッターの振りが違う。1回の途中で勝負は見えてしまった。まあ、勝負事は何があるか分からないんだけどね。洗濯をして、また通信をする。実家に帰っている間に回れなかったサイト(基本的に過去の記事が残るところ)を見ているとかなり時間がかかる。腹が減ったのでうどんを食べる。かなり量がある。途中で「大食い選手権」に出ているような気分になってしまった。何でこんなに残ってるんだ。自分に食欲がないのはわかってるだろうに…などと思いながら無理やり平らげると、後で起きてきたカミさんに「うどん、残ってないの?」と言われてしまった。あ、また食べるつもりだったのね。そして彼女はまた新しいうどんを作って食べるのであった。

今夜も私が息子の身体を洗う。今日はカミさんがいるのでラクだ。今日も息子は「シンちゃん(仮名)、おとこのこ?」から始まる一連の会話をはじめる。そして言った。
「とーちゃん、おちんちん、ふたつ、あるん?」
「あぁ? オチンチンは一つや。これはキンタマ!」
そう応えてペニスを持ち上げ陰嚢を示すと、妙に喜んでいる。こちらの答えにちょっと照れが入っているのが面白いのだろうな。

息子をカミさんに預けて私が自分の身体を洗っていると、息子が下りてきた。「……るで!」と言っているのが聞こえる。私が出てくるのを待っているらしい。一緒に寝ようということかと思っていたのだが、上がってみるとゼリーを食べる用意ができている。カミさんが「『父ちゃんが出てきてから食べる』って言ってるの」と教えてくれる。そうか、そういうことは気にしなくてもいいんだけどね。ゼリーは甘すぎて息子の口に合わなかったようだ。13日にファミレスからの帰りに買ってきたアイスクリームが私の分だけ残っていたので食べる。息子も欲しがるので囓らせてやるが…ずいぶん食べるスピードが速くなってるな。もう私と変わらんじゃないか。ちょっと前までは両親が2つ食べる間に1つしか食べられなかったのに。

今日はさすがにカミさんが息子を寝かせることになる。その間に私はまた通信である。SF大会に秋山瑞人氏が来ていたらしい。カミさんに言うと「えー、だったら行きたかった。サイン欲しい!!」などと言っている。まるでミーハーである。いちおう立場は同じはずなんだけどね(苦笑)



8月16日(水)
昨夜、3時前に私が寝室に入ると息子は股間を濡らしていた(なんか、イヤラシイ文章だな)。まだ出そうなので、廊下に連れて出てオマルにオシッコをさせる。しかし、彼はそれで眠れなくなってしまったらしい。母親に向かって「ねられへん」というのを繰り返す。こういうときは私の方には来ないのである。数十分も繰り返しただろうか。ついにカミさんがキレた。「寝えへんのなら外に行き!」と言って息子を寝室から閉め出して戸を閉め切る。息子はビービー泣く。しばらくして寝室に入れてもらった息子は、しゃくり上げながらもしばらく自分の布団で耐えていたが、また母親の方に転がって行ったのであった。

それで今朝はカミさんは機嫌が悪い。息子も眠そうである。それでも彼は朝食を食べ、カミさんは彼を保育所に連れていってくれたのであった。カミさんの体調が戻らないならば、私が連れて行かねばならないかと思っていたんだけどね。

今日からまた仕事である。ああ、なぜ夏休みというのは終わってしまうのであろうか。さすがにみんな休んでいるようで、往きの電車はかなり空いていた。座れてしまったくらいである。往路に座れるなんて滅多に無いことである。

今日は通勤時にマイノリティ・リポートフィリップ・K・ディック:ハヤカワ文庫 1999)の「水蜘蛛計画」と「安定社会」を読み終えた。「水蜘蛛計画」は当時のSF界の様子がうかがえて楽しい。ここまで読んできて、だいたい作者の「時間」に対する考え方のパターンが見えてきたな。でも、過去に対して何らかの作用を及ぼしたとき、その影響が今の時間軸の中でだんだん現われてくるというのは、ちょっと変なような気がするな。だって、その時間線の中ではそのことは過去のその時点で確定してるんだから。続く「安定社会」は、冒頭の飛翔シーンは非常に気持ちがいいのだが、全体として何を言いたいのかよくわからない。そりゃ、一言で言えば「主人公が●●してしまったので●●になってしまった」というふうにまとめてしまえるが、それではあまりに底が浅すぎる。私の読解力不足かなあ。(ATOKって「どくかいりょく」では「読解力」と変換しないのね)

家に帰るとカミさんは通信していた。体調はそれほど悪くなさそうである。日記を書き、通信する。今日読んだ中ではこれがSF大会のレポートとしては出色でしたな。やはりプロの文章は読ませてくれます。これを読んでカミさんと話していたことを思い出したのだが、秋山瑞人氏というのは、一般読者よりも同業者に評価される作家なのではないだろうか。音楽でも、一般の評価が低くてもミュージシャンによく聴かれているアーチストというのがいるからね。ま、一般の評価がどうであれ、彼は他の作家の目標となるに足る存在だと私は思っているのである。



8月17日(木)
昨夜は遅くまで仕事をしていたので、今日は遅めに出勤するのである。寝ていると息子が起こしにきた。自分では起きられないので、手を引っ張って起こしてもらう。役に立つようになったものである。身体が動かないので、冷房を切るために彼にリモコンを持ってきてもらう。エアコンを止めてから元のところに戻してもらう。本当に役に立つようになった。「ご飯食べたか?」と訊くと「たべたよ」と応える。一緒に階段を下りるが、ちょっと足元がふらつく。息子の上に転がり落ちないように気をつけなければ。

夏バテである。食欲がないので、昼飯は山菜ご飯と刻みうどんの定食になる。こういう、澱粉質に味を付けただけのような食事は嫌だったんだがなあ。このように蛋白質やビタミンや繊維質が少なそうな食事をしている人間を見ると「アタマ悪そう」などと思っていたりしたんですよ。でももう、自分がそうなっちゃってるんですな。

今日は通勤中に図書館で借りているマイノリティ・リポートの「火星潜入」を読み終えた。「昔のSF」という感じがするなあ。私としては、もう少し微乳のヒロインの胸に関する描写が多ければポイントは高かったのだが(こらっ)。

短納期の仕事が続けて入ってきているので、今夜も遅くなってしまった。息子はもう寝ていたのであった。しばらく、朝しか顔を見ていないなあ。



8月18日(金)
昨夜はカミさんの横で日記を書いていたら木根さんからカミさんに電話がかかってきた。彼女が電話しているのを聞いていると、例によって睡魔に耐えきれず寝てしまっていた。気がつくと6時半である。1時間で日記を書いて上げる。

7時半になって妻子が起きてきた。今日はちゃんと起きれたようである。息子は昨日の昼間に微熱があったということで、カミさんは彼の体温を計っている。最初は電子体温計で計っていたのだが、計るたびに0.1度ずつ上がっていくというので3回計った後にアナログの体温計で計り直している。それがいいだろうね。それで計り続けていると、あと650回も計ったら血液が沸騰してしまう。

朝食を食べ終え、着替えるために部屋を出ていこうとすると息子が「とーちゃん、おしごと?」と訊いてくる。「そうだよ」と応えて部屋を出ると「かばん、わすれないでね」と声をかけてくる。偉くなったものだなあ。

今日は通勤中に図書館から借りているマイノリティ・リポートを読み終えた。最後の「追憶売ります」は、まあ普通のSFでしたね。多層構造になっているというのは、当時としては斬新だったのかもしれないが。しかし、最後のオチがよくわからない。主人公がそれを信じているからああいうふうに思ったということなのだろうか。でもそれだとヒネリも何もないからなあ。それが真実だった、というオチだというには根拠が薄弱すぎる。やはり読解力が足りないのだろうか。どうもディックは私に合わないようだ。オチが理解できないというのが最悪だな。ディックといい、神林といい、大原まり子といい(代表作といわれる作品は読んでいないが)、ティプトリーといい、キイスといい、SF界の主流派と言われる人々が評価している作家がぜんぜん面白くないのだ。ま、いっかあ。SFというのは常識とは異なることに意味を見いだすことなのだから(本当か?)。ここ20年ほど馴染んだ作家以外のSFをほとんど読んでいなかったのも、評判の高い作品が面白くなかったというあたりにも原因があるような気がする。仕事が忙しかったのはもちろんだけれども。

しかし「追憶売ります」は「トータル・リコール」が原題ではないのね。途中で「リコール」という言葉が出てきたのでてっきりこれが原題だと思いながら読んでいた。「全額返金」という意味だと。そういう意味では、「マイノリティ・リポート」って「少数報告」と訳されてたこともあるのね。個人的にはこっちの方がいいと思うんだけどなあ。私ゃてっきり「少数民族に関しての報告書」だと思ってましたぜ。私が訳すなら「少数派の予言」かな。

帰りには「赤い涙」(東野司:ハヤカワ文庫 1988)を読み始める。家を出るときに玄関の鍵を閉めたところで「マイノリティ・リポート」がほとんど終わりなのを思い出して、あわてて自分の部屋に駆け込んで手近な未読の本をひっ掴んで出てきたのである。最初の「バッドチューニング」を読んだが、MOUSEを読んでしまった後ではドラッグ関係の描写が甘いように思えてしまうんだなあ。まあ、書かれた時代も違うんだが。

今日は早く仕事を終えて図書券を買って久しぶりに梅田の本屋にでも行こうと思っていたのだが、営業がいないので待っていたら遅くなってしまった。どうやら帰ってしまっていたらしい。うみゅー。家に帰ると息子はもう寝ていた。

カミさんは高校野球の智弁和歌山とPL学園の試合について「あの試合を見た後、他の試合を見るとレベルがぜんぜん違う」と言っていたが、そうでしょうね。私も夜のニュースで見たが、よく打ちますなあ。PL学園の方がスイングが速いように見えるのだが、智弁和歌山の打球は本当によく飛ぶ。ちゃんとミートできているのかパワーがあるのか。まあ、ここ数年、PL学園は投手力が弱い印象があるんだけれども。PL学園に香月君がいれば勝ってたんだろうけど、それは言っても意味の無いことである(苦笑)。



8月19日(土)
昨夜も通信している途中で寝てしまっていた。2日連続で布団の上で寝ていない。明け方ちょっと寒かった。そろそろ秋の気配か…

階上で7時半に目覚ましが鳴ったが、妻子は8時前になって起きてきた。うう、やっと日記にノってきたところだったのにぃ。息子はさっそく私とパソコンの間に割り込んできて膝の上に腰を下ろす。彼はトラックポイント やそのクリックボタンを指差して「あかいな」と言い、それを触ってマウスポインタを動かし出した。そのうちに「きえた」とか言いだした。何かと思ったら、マウスポインタが文字列の中に入ってキャレットの形になっているので非常に見にくくなっているのだ。ポインタを文字列の外に出して矢印の形に戻し「ほら、ここやで」と示す。「なんで、みえへんかったん?」と訊くので「縦棒の形になってたからやで」と応える。さらに訊いてくるので「小っちゃいからな」と応える。矢印の形のポインタを「ほら、矢印の形や。大きいやろ」と言うと「おっきいなー」と応える。後でポインタがリンクの上に移動して手の形になったのを示して「お手々の形になってるな」と言うと彼は「おっきいな」と言い、「いっしょやなー」と何度も繰り返す。どうも最近、異なったオブジェクトの共通の特性を見いだすことに喜びを感じている様子なのである。

カミさんが朝刊の「大分6人殺傷容疑の少年が日常的にホラービデオを鑑賞していた」という記事を読んで「バイオハザードが何本売れたと思ってるのよ」と言って怒っている。まあ、そういう意味では犯罪者が朝日新聞を購読している確率もかなり高いと思うんだけどね。脱税事件とかだったら犯人が日経を読んでる可能性は半分をはるかに超えると思うぞ。あと、増田明美さんのインタビュー記事が載っていたが、顔写真を見て愕然とする。30台半ばとは思えない肌である。マラソンってのは走ってる間は紫外線浴びまくりだし、体内は活性酸素漬けだし、かなり酷く遺伝子が傷ついているのではないだろうか。若いうちに癌を発症するようなことにならなければいいのだが、と他人事ながら心配になってしまう。余計なお世話だが。

今日もカミさんが息子を保育所に連れていってくれた。そして、いつものように帰ってきて昼寝をするのである。私が自分の用事をしていたら雨が降ってきた。ベランダに上がって洗濯物を取り入れる。3階に上がると、カミさんが幽鬼のように起きあがって窓を閉めているところであった。そして彼女は無言でまたドテッと横たわる。なんか怖い。

自分の用事を終え、ネットサーフィンする。先日立ち読みした青年誌のなかなか良いえっちマンガに作者のホームページのURLが載っていたので、そこを起点に今日は久しぶりに画像系のサイトを廻る。本当に久しぶりだ。こういうところは1年以上廻ってなかったのではなかろうか。ここしばらく忙しくてテキストを読むだけで精一杯だったからね。私が見た中ではけろりんさんが良かった。特にこれなんか好きですねえ。こういうものがタダで見れるなんて、いい時代になったものです。で、そこから柴田昌弘氏のページにリンクが張ってあった。やはりこの人は凄いっすね。こういうところを廻っていると、ケーブルテレビの高速回線のありがたさを実感する。さすがに一瞬で表示されるというわけにはいかないんだけれどね。

夕食を食べながら高校野球を見ていたのだが、連投のせいか香月君は調子が良くなさそうでしたね。「苦しいときは手首を効かせて外角低めに投げてれば大丈夫」という感じでずっとやってきてたように見えたんだが、最後にはもうその拠り所さえままならない状態でしたから。この対戦は期待してたんだけどね。まあ、このあたりで負けておいた方が彼の将来のためには良いでしょう。今は本人はとてもそういうことは考えられないと思うんだけどね。

今夜は私が息子を風呂に入れる。彼は私の股間を見て「きょうは、おとこ?」とほざいた。コラ、父ちゃんはずっと男だよ。魚じゃあるまいし



8月20日(日)
今朝はテレホーダイ後に起きる。こんな時間まで寝ていられるのは常時接続のありがたさである。通信していたら、階上で息子の起きる気配がした。上がっていくと息子が母親を起こそうとしていたが、起きるわけがないので説得して下りさせる。居間でしばらく息子と過ごす。彼は一人で本を読むように(というより、めくるように)なったのはいいのだが、ページをめくるごとに「これ、なに?」とか訊いてくるので大変である。まあ、もう少ししたらこっちがキミに教えてもらう方が多くなるんだろうからね。将来への投資だと思って、なるべく多くの知識を入力してやるべきなんだろう。

しばらくして、彼は飢えてきたようである。「パン買いに行こか?」と訊くと、母親が起きるまで待つと言う。そういうことは気にしなくてもいいんだけどねえ。そして、昼前にカミさんが起きてきた。彼女は息子を連れて近くのスーパーにパンを買いに行った。

今日はカミさんの機嫌が悪い。息子に対する言葉にいちいち険がある。今日は私が世話をした方がいいかなと思っていたのだが、彼は帰ってくるとすごく眠そうである。カミさんと一緒に昼寝をすることになる。私は階下に下りて自分の部屋にいたのだが、息子が下りてきて叫んだ。「とーちゃん、ほんだけ、よんで」…うう、こういうときでも本は父親に読んでほしいのか。彼と一緒に寝室に上がり、絵本を読んでやる。でも、そうこうしているうちに私も眠く……

夕方になって目覚めると、カミさんはお義母さんから頼まれた原稿をワープロで入力していた。ワープロの資格を持っていると、こういうときに便利なのである。18時を過ぎても息子が起きてこないので、起こして夕食を食べた。カミさんに野菜ジュースを買ってきてもらうのを忘れたので、夕食後に息子を連れてスーパーに買いに行く。カミさんに、ついでにアイスクリームを買ってくるように依頼された。それじゃ、溶けないうちに帰ってこないといけないから自転車で行くことになるか。ビールを飲んでちょっと酔ってるので歩いていこうかと思ってたんだけどね。酔っている自覚があるので、自転車の運転には非常に気を遣う。息子を乗せてるしね。無事に帰り着いたときには心底ホッとした。酔って多少動作に正確性がなくなっても自分の身体だけを使ってる分にはそれほど大きなトラブルにはならないのだが、現代は機械装置によって身体が元来持っているより大きな力を発揮できるようになっているから少しのミスでも大きな被害をもたらすようになっているのである。いや、たとえ自分は肉体が元々持っている力で歩いていても、ガソリンエンジンで運動能力を拡張され鉄で装甲された人間が走っているから事故った時に被害が大きいのは同じだ。それでこれだけ豊かな生活ができてるんだけどね。自動車なんかその典型だな。酔っぱらい運転をするバカはそれが理解できていないのである。

そういえば、この土日で家の外に出るのは初めてだな。なんと暗いヤツだ。おかげで膝の痛みはだいぶ楽になった。階段の上り下りでも痛むことはなくなっている。しかし振り返ってみると、それでもまだ膝に余裕がないので下りるときには足首の関節で衝撃を吸収しているのに気づくのである。精神的なものなのかもしれないが。

今夜は私が息子を寝かせる。今夜も彼は「あせ、かいた」とか「かゆい」とか言っている。一度着替えに階下に下り、2回目は痒いといって薬を塗ってもらいに下り、ついには「くーらー、いれて」と言いだした。仕方がないなあ。私は眠いときには意志の力が無くなるのである。

狼谷辰之  新書館ウィングス文庫
なる
¥620+税  ISBN4-403-54021-X



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