1999年3月上旬の日記

■3月1日(月)
職場の近くの劇場のポスターが貼ってあるのを見た。「こけら落とし」というのを「柿落とし」と書いてある。へええ、こういう字を書くのか。これって、柿が熟れて食べられるような状態になるという意味なんだろうか。でも、柿を「こけら」って読むのはなぜなんだろう?

家に帰って辞書を引くと、「こけら」とは「木のかけら」のことで、「こけらおとし」というのは「(新築工事の最後にこけらを払い落したところから) 新築劇場の初興行」(
広辞苑 第四版)と書いてある。柿が熟れるのとは関係ないのね。でも、やっぱり何故「こけら」に「柿」という字をあてているのかは謎である。「木屑」とも書くらしいが、こっちの方がよっぽど自然だと思うんだけどなあ。

さらに、広辞苑には「柿板(コケライタ)の略」とも書いてあって、マイペディア97を見ると「材料はヒノキ,サワラ,クリ等」と書いてある。ますます謎である。私は薄々の一般人なので、寝ぼけたことを書いてるのだろうなぁ。誰かご存じでしたらお教え下さい

今日は、通勤時に菊地秀行氏「欠損」と井上雅彦氏「知らないアラベスク」を読んで、やっと「月の物語」を読み終えた。半月かかったな。(こういうとき、日記をつけていると便利なのだ)

欠損」であるが、往きの電車の中で途中まで読んだときには「巧いなぁ」という感想だったのだが、帰りに最後まで読み終えて唸ってしまった。これは凄い。改行が少なくて、同じ行に違う人間の言葉が混じっていたりする。私などが書くときには、絶対にやってはいけないと思っているようなことをあえてやっている。なのに、なぜこんなに心に響いてくるのだろう。話者の立場が明確になっているからなのだろうが、いやはやものすごい筆力である。不覚にも感動しちまったぜ。いや、良いものを読ませていただきました。



■3月2日(火)
今日から「
異形コレクション グランドホテル」を読んでいるのである。まず新津きよみ氏「ぶつかった女」を読む。カミさんの評価はあまり高くなかったようだが、私は面白く読めた。ことほどさように、こういうものの評価というのは好みが分かれるものなのであるな。だからこそ、世の中にはいろいろな娯楽作品があるわけなのだが。

こういう「奇妙な味」というのはなかなか好みなのであった。「奇妙な状況」に陥った主人公が、それを分析する過程に素直に感情移入できる。これは何なんだろうか。「この世界」の「法則」が開示されていて、分析・制御が可能であるという安心感だろうか。ホラーやファンタジーだと、そういうものがまったく関係ない世界もあるからねえ。このあたりで私の好みが分かれているのかもしれない。

ただ、途中で語り手が変わるところがあるのだが、ここがうまくいっていない。同じ人物の視点かな、と思いながら読んでいたので混乱した。最初に一行、さりげなく説明してくれれば、と思ったのだった。ただ、オチを見てから考えると、意識して読者を混乱させたのかもしれないとも思ったりする。あんまりそういうことをしても意味があるとは思えないが。

で、好みの話に戻るのだが、趣味を楽しむという点では、自分と嗜好が似ている人間を見つけるのがいちばん大事なんでしょうな。好みの作品を教え合えるからアンテナが広がるのと同じだし、同じ話題で盛り上がれる。ネットワークが使えるようになって、このあたりがずいぶん便利になったような気がする。極端な話、日本に数人しかいないような趣味であっても同好の士は見つけられるだろうし、距離も関係ない。いい時代に生きているものである。

ラクをしようと思えば、自分と同じ趣味でアンテナが広い人を見つけて教えてもらうのがいちばんですね。ただ、私の場合は逆の場合もあったりしたのですけどね。某音楽評論家が私と趣味が反対なので、その人の誉めたものは聞かない。その人がけなしていたら、けなし方を見て「このけなし方ならアタリだろう」と思ったら正解だったとか(笑)。

脳死肝移植された患者の容態が悪化しているらしいですけど、大変ですね。移植した臓器がうまく動かなかったからといって、代わりがあるわけじゃない。「戻れない橋」を渡ってしまったわけですから。移植を受ける前の状態がどうだったか知らないので軽々しいことは言えないのですが…

 ◇ ◇ ◇

今夜も帰宅したのは21時過ぎだった。妻子とも寝室に入っているようだ。鞄の中から使用済みの充電池を探していたら、上の方から「おとーちゃー!」という声が聞こえた。息子だ。まだ起きていたのか。続けて呼ぶ声が聞こえる。「はーい」と応じる。上で「はーい」と応える。また「おとーちゃーあん」と呼んでいる。精一杯の大きな声を上げている。はいはい、いま上がりますよ。階下での用事は早々に切り上げて3階に上がっていく。

私が寝室の隣で着替えていると、息子は寝室からこちらに入ってきてふすまを閉め、カミさんにバイバイと言う。ゴキゲンである。着替え終わって寝室に入ってゆくとついてきて絵本を差し出す。最後の絵本らしい。いっしょの布団に入って読んでやる。「まっかい」とか言って2度読まされたが、しばしば目をこする。眠そうである。読み終わったら「ばいばい」してくれた。

今日、月末発売予定の「小説Dear+」に載る「美貌の食卓」のゲラが上がってきた。いや、さすがにプロの編集者のチェックは鋭い。十数ページも離れたところで 表現が統一されてないのを指摘するんだからなあ。でも、もう今月になっちゃったんだけど、今ごろこんなことしてて大丈夫なんだろうか?



■3月3日(水)
今朝は、息子は両親が起きても目覚めない。昨夜遅かったせいだろうなぁ。雨戸を開けて優しく起こす。それほど愚図らずに起きてくれた。いっしょに居間に下りる。洗面所で顔を洗っていると、階上から息子の泣き声が聞こえてきた。上がっていくと、居間の床に座り込んでわんわん泣いている。脱いだオムツを自分で捨てたかったのに、母親に捨てられて拗ねているらしい。難しい年頃だねえ。けっきょく食卓の椅子に座っても立ち直れず、穿いたばかりのオムツをまた脱いで、新しいオムツを自分で穿きなおしたのであった。

息子は、来月から公立の保育所に入れることになったようだ。月額一万ちょっとの差だが、年額だと二十万以上安くなる。それでも、高価いことには違いないんだけどね。カミさんは朝食を食べている息子に「シンちゃん(仮名)、4月から新しい保育所行くんやで。●●先生や●●先生ともお別れやねん」と言っている。そんなこと言っても彼にはわからないんじゃないかと思ったのだが、彼は彼なりに真剣に聞いて理解しようとしているようだ。最初からわからないだろうと決めつけるのは良くないんだよなあ。自戒しなければ。

今日は通勤中に「
異形コレクションIX グランドホテル」の芦辺拓氏「探偵と怪人のいるホテル」と篠田真由美氏「三階特別室」そして奥田哲也氏「鳥の囁く夜」を読んだ。「探偵と怪人のいるホテル」はカミさんの評価は辛かったのだが……私も同じであった。何じゃこりゃ? この本の主旨を勘違いしてるんじゃないだろうかと思ったが、前にも書いておられるみたいだしなあ。

三階特別室」は……まあこんなものか。全ての作品に、感動したり笑えたり「やられた」と思ったり、というのはありえないからねえ。で、「鳥の囁く夜」は……やはり、私はこういう作品は好みではない。

今月の「将棋世界」村山九段最期のときのご家族の話が載っている。読んでいると胸が痛む。辛い。あれだけの才能がある男がねえ…無念だったろう。できうれば、身体の心配をせずに、心ゆくまで羽生と戦わせてやりたかった。

…とか思ってたら、少年サンデーで将棋マンガが始まったようである。う〜ん、ちゃんと取材してないのがバレバレだな。本くらいは読んだかもしれないが、実際にやっている人間には当たってないだろう。まあ、そんなに気軽に入れてくれるような世界ではないかもしれないが、サンデーでやるとなると協力してくれそうな気がするんだがなぁ。でも、「月下の棋士」がプロが監修しててアレだから……というのも、コアなマニアの意見かなぁ。

そういえば、きょうはだんご3兄弟の発売日だった。さっそく、職場からの帰りに寄った本屋で、有線でかかっているのを聞いたが、テレビでやってたのよりノリが悪いような気がする。あれじゃ、金を出して買う気はしないなぁ。でも、今日一日で予約分も入れると百万枚売れたらしいんだが。

昨日あたりから、めっきり春めいてきた。道を歩いていても気持ちがいい。ちょっと発情期に入ってきたような気がする。なんだか、道行く女性がいつもより魅力的に見えるような気がするし。季節柄、女性の方は痴漢に注意しましょう。私がするわけじゃないですが(笑)



■3月4日(木)
今日は久しぶりに将棋の本を読みたくなって
「覇者の一手」を立ち読みしていたのだが、読んでいてハマってしまったので購入した。面白い。一般の人でも、こういう世界があるというのを知っておいて損はないと思うが(笑)。まあ、好奇心のある人は、ですけどね。

某氏のところの掲示板、今月のSFマガジンで紹介されたせいか最近は変な書き込みが多い。この前はトンデモ系の人がきてたし(宇宙人が地球上で活動してくださってるとか。自分の大学名を書いてるところが●●だし、またその大学名がいかにも●●っぽい。公共の場で他人の批判をするのはイカンのだが、あれはきっとギャグに違いないから笑ってあげなくては)。今日はついにネズミ講の勧誘まで(自分の住所まで書いてるんだよなあ。本当の住所だったら馬鹿だよなぁ)。SFファンというのはそんなに馬鹿だと思われてるのかな。まあ、馬鹿が多い世界ではネズミ講もうまくやれば儲かるのではありますが(笑)。掲示板の管理者というのは大変だと思いますね。私はそれが嫌で掲示板を作ってないのだが。(ほとんど誰もここの存在を知らないって)

ああいうところに恥ずかしげもなくああいうことを書くというのは、SFとトンデモの区別がついてないんだろうなぁ。でもなあ、ひょっとすると世間ではSFとトンデモ系ってのは同じように見えてるのかもしれないしなぁ。どちらも現実離れしているように見えても、厳然とした違いがあるのだが。…って、こういうことを言ってると、またコアなファンだと思われて遠巻きにされてしまうんだろうな。

「イニD」のコミックスの新刊が出ていたのを職場の近くの書店で見かけたので、カミさんに電話した。息子はすでに保育所から帰っていたので電話に出てきた。向こうで何だかゴチャゴチャ喋っているが、理解できない。「〜した」というのを教えてくれているらしいのはわかるのだが。カミさんに聞くと、どうやら「イチゴを食べた」ということを言っていたらしい。

今日は、通勤中に「異形コレクションIX グランドホテル」の五代ゆう氏「To・o・ru」と山田正紀氏「逃げようとして」を読んだ。「To・o・ru」はまあ、こんなもんでしょう。「逃げようとして」はカミさんの評価は最悪だったのだが、私はけっこう面白く読めた。私も壁の模様をじっと見ていると目が回りそうになることがあるんですよ(笑)。でも、最後の一言は余計だったような気がするけどなあ。



■3月5日(金)
今朝、息子はカミさんが起きて部屋を出て行っても目覚めなかった。昨夜は22時すぎに私が帰ってきて着替えているときも寝室で何か喋ってたしなぁ。夜更かしはイカンぞ。しかし、私が起き上がると目が覚めたようだ。まだ雨戸を開けてなくて暗いので、彼は電灯のスイッチから伸びている紐をガチャガチャ引っぱって電灯を点ける。我が家の寝室では、布団の中から電灯を制御できるようにビニール紐を結びつけて延長してあるのだ。自分の操作により電灯が点くのが嬉しいのだろうか。ただ、私が雨戸を開けて電灯を消すと、怒って泣きだした。明るくなったから電灯なんて点けなくてもいいじゃないか。難しい年頃だねえ。

「階下に下りるで」と言ってもなかなかついてこない。挙げ句の果てに「ばいばい」をやりだした。しかし、私が寝室を出て行くと泣きながら追いかけてきた。さらに、手を引いて階段を下りようとすると「だっか」と言って負ぶうよう要求する。一貫性のないヤツめ。しかし、そう言いながらも息子を負ぶって階段を下りてしまう父であった。

食卓の横でカミさんが
だんご3兄弟を歌うと、息子が「追っかけ」パートを歌う(ちょっとタイミングが遅れたりするが)。おおっ、ちゃんと掛け合いしてるぞ、コイツ。まあ、一人でも何だか童謡らしきものを歌ってたりしてたから、驚くほどのことでもないのかもしれないが……しかし、二歳児に歌わせるとは、おそるべしだんご3兄弟

そういえば今日、帰宅してからカミさんが録画してただんご3兄弟のビデオを見たのだが、アレンジは有線で流れてたのと同じみたいですな。発売日に有線で聞いたときには「ノリが悪い」と感じたのだが。やはり、あれは絵とシンクロしてるから楽しいんだろうな。映像なしで聞くには音が薄すぎる。

今朝は通勤中の往きに恩田陸氏「深夜の食欲」、帰りに森真沙子氏「チェンジング・パートナー」を読んだ。「深夜の食欲」に関しては、この方も読むのは初めてなんですが、巧いですね。この本に収録されている作品は、どれもこれも気合いを入れて書かれているのはわかるのですが、これまで読んだ中では表現力で頭一つ抜けているような気がします。ほんのちょっとした違いで臨場感というのはまったく違ってくるんですよね。でも作品の評価としては、私はこういうのはまったく怖くないので…どうなんでしょう。他の人が読んだら怖がるような気もするのですが。

チェンジング・パートナー」は……う〜ん、なんだか途中で話が壊れちゃったような気がしますね、私には。現実世界が異世界に変容してゆくところは、もうちょっと丁寧に描写してもらわないと私みたいな馬鹿には伝わってきません。でも、こんなに無茶苦茶な感想ばかり書いてたら、いつか自分に跳ね返ってきそうだな……まあ、こっちは金出して読んでるんだから(笑)

先日発表された次世代PSですが、たいそう凄いもののようでございますね。発表会のレポートを読むと、ロクヨンやドリキャスなどとはまるで次元の違うモノのようでございます(本当に予定した時期に大量供給できるかどうかは別にして)。レポートされてる方も、ふだんはもっとクールな人なんですけど、舞い上がっちゃってますね。変換ミスも目立つし。これで、アメリカに押さえられている半導体(CPU)やソフトウェアの分野での、独占を切り崩す端緒になるかもしれないという見方さえ出てきましたな。

帰宅すると、今日も息子はドタドタと二階の踊り場まで走ってきて「あかえりー」と言ってくれる。ウガイをしていて、何だか呼び方がヘンだと思ってたら、彼は私のことを「だんなさ〜ん」と呼んでいた。こらこら、それは母親が私を呼ぶときの呼び方だって。



■3月6日(土)
今朝も、息子が最初に目覚めたようである。目を開けると彼と目が合った。まだ眠い。死んだふりをする。カミさんが起きると彼もいっしょに起き上がった。そして、「おきて〜」と言いながら私の布団の上にドスンと乗ってくる。ぎゃー、やめてくれー。

気がつくと11時近くになっていた。今日は近所のレンタルビデオ屋が200円均一セールなので、10時前に起きるつもりだったのだがなあ。起きてゆくと、息子が朝食を食べ終えたところだった。カミさんが息子を公園に連れていくという。妻子が出かけたのを追って自転車で出発する。途中で歩いている二人を追い抜いた。息子は私を見つけて呼ぶが、あいにく行き先が別なのだよ。彼の声を背中に聞きながらレンタルビデオ屋に急いだのであった。

帰宅して朝食を食べていたら妻子が戻ってきた。息子は「ぶらんこ、した」「しゅぶりだい、しゅぶりだい、しゅぶりだい……」と、公園でやったことを教えてくれる。私がいないときのことも伝えられるようになっているんだねえ。

今日は、
交通事故で壊れた私の自転車の代わりを買いに行く。私の自転車は常時2台準備しているのだが、先週は1台で運用していたのだった。息子のシートを取り付けているカミさんの自転車が古くて調子が悪いというので、新しい自転車を買って子供のシートを移し、古い自転車を私の予備機にすることにする。カミさんの自転車は、高校時代から乗っていたという年代物なのだ。息子は自転車屋は初めてなので、緊張気味である。展示してある自転車の鍵でテントウムシ型のものを見つけて「てんとむし」と言う。ドラえもんやアンパンマンもあったのだが、いちばん目立っていたからねえ。

最近、息子は部屋の中でボールを投げる。お茶とかを出していると危なくて仕方がない。まだ左右は関係ないようだ。今夜はTBS系の「筋肉番付」でボウリングをやっていると下から転がそうとするし、バスケットボールをやっていると両手で放り投げる。テレビの真似をしているのである。

カミさんは、印刷代が最近高価くなってきたというので同人誌の印刷屋を替えたらしい。こんどは大阪市の印刷屋なので、車で行って1時間で入稿が済んだそうな。「これまでの苦労は何だったのよ〜」とか言っている。もう戻れないだろうな。

次の同人誌は、私に痛かった啓×涼らしい。だいぶ書き直したようだが。本人は「ああいう甘いの、身内には受けなかったけど、一般の人には受けると思うの」などと言っているが、さてどうなりますか。

そういえば、アクセスカウンタが400を超えた。ちょっとペースが落ちたな。まあ、しばらく中断してたから客が逃げるのは仕方ないか。やはり日記は毎日更新しないとね。



■3月7日(日)
昨夜、私は息子を寝かしつけていっしょに眠ってしまったので、今朝は早起きしてネットサーフィンする。
テレホタイムが終わって落としてきた文書を読み終わり、朝食を食べ終えて新聞を読んでいたら階上で息子が呼ぶ声が聞こえた。今日は私が息子の世話をする番なのである。居間に下ろしてみると、パジャマがビショビショである。けっこう長い間寝てたからねえ。さっそく着替えさせる。服は自分で脱がせることにする。時間はかかったが、一人で脱いでしまった。

ひとしきり遊んで朝食を食べさせていたらカミさんが起きてきた。パンだったのだが、息子はあまり食べなかった。それじゃ、あとで腹が減るぞ。食後に伊予柑を剥いて食べたが、彼は今日も嫌がって食べなかった。

雨が降っているが、息子が外に出たがるので散歩に連れていくことにする。カミさんは昼寝するらしい。息子にはビニールのレインコートを着せて外に出る。いつもより歩くのが遅い。履き慣れない長靴を履いているからのようだ。私の指をギュッと握って歩いている。トコトコ歩く。雨が降っているので近所の電器屋に行く。エレピを弾かせたり、パソコンデスクに座らせたり、ベビーコーナーでトラックのオモチャで遊ばせたりして時間を潰す。1時間以上遊んでいたが、ここは高価いので何も買わないのである。イヤな客だね、まったく。

一通り遊んだので帰る。途中で息子は、私を公園の中に引っ張っていく。おいおい、今日は雨だから公園では遊べないぞ。すべり台に登りたがるが、これは拒否。すると今度はブランコのところに引っ張っていく。仕方がない、レインコートの上から座れば濡れないだろう。座らせて2〜3回揺らしてやると満足したようである。公園を出ようとすると、水道を指差して何か言っている。手を洗いたいのか? 水を出して手を洗わせる。手を拭けと言う。ハンカチを出して拭いてやると、やっと区切りがついたようだ。

家に帰ると疲れがどっと出た。やはり、息子を雨の中長時間連れ歩くのは疲れる。帰ってくると、居間でひっくり返ってちょっとあっちの世界に行ってしまっていた。息子が「おきて〜」と起こしに来る。「ねんねしよか」と言っても「いやーの」と言う。いつもは昼寝する時間じゃないのか、キミは。

今日も息子は室内でボールを投げようとする。ボールを投げる前に両手で持って頭の後ろに回そうとする。ピッチャーが振りかぶるマネらしい。だが、腕が短くて頭が大きいのでなかなか頭の後ろに回せないのであった。笑ってしまった。許せ、息子よ。

息子に絵本を読んでやりながら「ガメラ2/レギオン襲来」を見る。いまの私のような人間には、映画を観るために2時間も潰すというのは最大の贅沢なのである。まあ、途中まではナニだったが、怪獣映画としてはなかなか良い出来であった。集中して観てないのでよくわからない点もあったが。ただ、人がダラダラ動いてて緊迫感が無いシーンが目についた。ああいうところをカットしてスピーディに見せればもっと良くなると思うんだがなぁ……でも、そうすると60分くらいになっちゃうか。洋画のパニック物とは元のフィルムの量が違うんだろうな(ひいては予算の額が)。

夕方になってカミさんが起きてきた。今日も寝過ぎで頭が痛いとか言っている。イソジンのウガイ薬葛根湯の錠剤が切れているので、息子を連れて薬局に買いに行くことにする。雨が止んでいたので自転車で行こうと思っていたのだが、玄関に下りて外を見ると降っていた。けっこう多めに降っている。多少の雨なら自転車で強行しようかと思っていたのだが、これでは無理だな。息子はもう行く気満々である。これで中止すると泣いて怒るだろう。歩いて行くことにする。彼には昼間よりも厚手のコートを着せ、手をつないで歩く。けっこう雨が冷たくて大丈夫かと思ったが、平気なようである。途中で、彼を励まそうと思って「もうすぐ電車見れるで」と言うと、彼はそれからずっと「もーすぐ、でんしゃ」「もーすぐ、でんしゃ」と繰り返しながら歩く。ちょっと早く言いすぎたかなと思ってしまったのだった。

薬屋ではあいにく葛根湯は無かった。子供連れで雨に濡れてきたのを気の毒に思ったのか、店の兄ちゃんが息子に牛の縫いぐるみをくれた。縫いぐるみをビニール袋に入れてもらい、息子に持たせて帰る。行きも帰りも踏切で電車が通るのが見れた。踏切を後にして、二人で「でんしゃ、みたなー」「良かったな」と言いながら帰る。だが、彼は途中でさすがに疲れてきたようで、自動販売機を指差して「じゅーすー」とか言う。「帰ってから飲もな」と、なだめながら帰る。しばらく行くと今度は「かーちゃん、くる」(母親に来てほしいの意)と言いだした。「もうちょっとやから」と励ましながら歩く。そしてついに家まで歩き通した。私が歩いても片道で10分以上かかる道のりなのに、偉いぞ。途中から負ぶって帰らねばならないかと思っていたのだが。傘を持っているので片腕で支えるのはしんどいからね。

 ◇ ◇ ◇

いや、上手いねえ。EVEのことである。日本テレビ系の「夜はヒッパレ」で宇多田ヒカルの「Movin'on without you」を歌っていたのだが。ノリが素晴らしい。ビンビンにハモってるし。思わず身体が動いてしまう。息子もいっしょにノっている。……と思ったら、彼は爪切りを出せと言っている。カミさんが出してきて渡すと、それを伸ばして口の前にかざして歌いだした。ぶははは、言葉は無茶苦茶だが、なんとなくそれらしいリズムとメロディで歌っている。そして、飛び跳ねて踊りだした。跳ねる跳ねる。ジェームズ・ブラウンばりの熱唱である。二回繰り返したが、あんまり面白いのでビデオカメラを持ってきてもう一度踊らせた。ヘロヘロになりながらも歌って踊る。寝不足なのにねえ。曲が終わっても興奮がまだ醒めやらぬようである。両親が歌ってやるとまた踊る。途中で童謡を歌いだすと元の曲にしろと要求する。そうか、そんなにあの曲が気に入ったか。あのパフォーマンスでノるというのは我が子ながら偉いぞ、誉めてやろう。



■3月8日(月)
ブルーウェーブからマリナーズのオープン戦に参加していた星野伸之投手、打たれちゃったようですね。個人的にはイチロー選手よりも期待してたんですが。あのゆるい球がメジャーにどこまで通用するかを。(向こうのアナウンサーはストレートをチェンジアップだと実況してたそうですな)

例によって、今日は通勤中に「異形コレクション グランドホテル」の村山潤一氏「Strangers」と京極夏彦氏「厭な扉」を読んだ。「Strangers」はなかなか書き方が巧いですね。いかにもありそうな話を続けて、最期にあなたも…とやる。とても面白く読めました。

厭な扉」はカミさんの評価は最低だったのですが、私にはまあまあ読めました。ネタはありきたりだけれど。ただ、読み始めは妙に漢字が多くて読みにくかった。こんなにふつう使わないような漢字を使う必要、あるんだろうか。あんまり読者のことを考えてないんじゃないかと思ってしまった。でも、この人、有名なんですよね、私は読んだことないですけど。そういうのを有り難がる読者層なんでしょうか。

カミさんによると、「ガメラ2/レギオン襲来」は昨日テレビでやっていたらしい。そうだよな、もうすぐ「ガメラ3」が公開されるんだから、その前作を放送するというのは充分考えられることだったな。宮崎アニメなんかもそうだし(そういえば、これも日本テレビ)。迂闊であった。

そうだとわかってたら、わざわざコピーガードがかかって画質が悪いのを金を出して借りてくることはなかったんだ。(我が家の居間のビデオは8ミリに音声付倍速再生機能があるので、まず映画は8ミリにダビングしてから観るのだ)そういえば、WOWWOWでやっていたエヴァの映画もまだ観ていないのになあ。



■3月9日(火)
昨日から、どうも背中と腰と喉が痛い。今日はうるさ型(こういう字を書くんだ。知らなかった)が客先で打ち合わせをしているので、昼から退社して静養することにする。

帰りにレコード屋に寄ると、新品のCDが3枚で1000円だった。同じものが何枚もあって、埃を被っているものもあったから、どこかの倉庫から掘り出してきたものなのだろうか。好きなアーティストのアルバムが何枚かあったので6枚買って帰った。しかし、なんで
トルーパーのCDがこんなにあるのかね?

いま、「ROYAL STRAIGHT SOUL II」をCD-ROMドライブで再生して聴きながら書いている。ブラックミュージック好きのアーティストが集まってソウルを演ろうという企画らしい。こういうのは好きなんだよな。いや、やはり生沢祐一氏は巧いですな。これだけでも買った価値があった。近藤房之助氏もいい味出してますね。

二枚目、JIVEの「ONE FOR YOU」を聴いている。このグループはデビュー直後(まだ会社の寮に入ってたから10年以上前だな)にFMでライヴを演っているのを聴いたのだが、レコードよりもライヴの方が上手く聞こえたんだ。さらにライヴも、オリジナル曲よりカヴァーの方が上手かったという、何だかよくわからないグループでしたね。このアルバムも「引き」が足りないなぁ。上手いだけじゃねえ……でも、実力があるからこそ、目立たないながらも長くやっていられるんだよな。こういう行き方は嫌いじゃないです。ワタクシ的には、このスタイルには飽きが来てないし、だんだん良くなってきていると思う。グループとして熟成してきている、というのかな。「SAYONARA O DAKISHIMETE」からの最終3曲は気に入った。最後の曲のオープニングのアカペラが、いわゆる「黒人霊歌」的で素晴らしい。こういうところがこのグループの真髄なんだよな。あんまり前面に出してないけれど。

本は、出勤時に「異形コレクション グランドホテル」の田中啓文氏「新鮮なニグ・ジュギペ・グァのソテー。キウイソース掛け」を読んでいた。この作品は、カミさんがベタ褒めだったのだが……うわ、げげげ。よくもまあこんなのが書けるな(誉め言葉です)。こりゃすげえ。でも、あのシェフが下ごしらえを終えた後にはニオイが残ってると思うんだがなぁ。

ここで訂正である。昨日の日記で村山潤一氏「Strangers」が面白かったと書いたが、村山潤一氏はイラストであった。文は西村直子氏であった。文のタイトルも別で「たまり場」なのだった。そうか、イラストがメインだったのか。知らなかった(爆)。先に目次だけテキストで入力して引用してきたから気づかなかったのだ。リンクすべきサイトを探してたときにイラストしか出てこないからヘンだと思ってたんだよな。同姓同名のイラストレーターがいるかと思っていたのだった。大ボケである。

職場からの帰りに寄った書店で小松左京先生の「日本売ります」を見つけた。たった1冊残っていたのだが、表紙に傷がついていたので別の店に行って買う。ここも最後の一冊だった。さっそく通勤時に読む本をこちらに切り替える。巻頭はタイトル作の「日本売ります」である。あらすじは覚えていたのだが(タイトルどおりだって)、このアイデアからこれだけの話をでっち上げてしまいますか。このあたりの構築力が常人とは違うところなんだよな。あらすじを書くとタイトルどおりになってしまうのだが、本当のテーマは経済活動の根本のところを問うているのだ、などと大上段に振りかぶっても語れるようになっているのである。

今日は私が早く帰ったので、カミさんより外食の提案がある。ではそうしましょうか。近所にある中華料理のチェーン店に行ったのだが、息子はスープについていた大きなレンゲを使いたいとゴネる。箸を使いたいというのは何とか説得してあきらめさせたのだが、これは説得できなかった。底が深くて食べにくそうなんだがなぁ。



■3月10日(水)
昨夜は息子といっしょに早く寝て、今朝は出勤するつもりで起きたのだが、朝食を食べているとどーっとしんどくなってきた。一日持ちそうにないので、今日も休むことにする。後が怖いな。

昼過ぎまで寝て、汗びっしょりになって目が覚めた。カミさんにうどんを作ってもらって食べ、医者に行くことにする。カミさんは彼女の評価の高い内科の医者(往診もしてくれるし、あまり休まない。働き者である)に行ってほしそうだったが、私は喉を直接治療してほしいので行きつけの耳鼻科に行く。まあ、カミさんはあの医者を家庭医にするつもりなんだろうけどね。

この耳鼻科の医者は、私が前回持病を発症したときにも関係していたので、薬の副作用とかに神経質なほど気を使ってくれるのである。
「お腹の調子はだいじょうぶですか?」
「あ、はい」
「調子のええ時はええんやけどね。悪いときは気をつけなあかんから…」
耳を覗き、鼻を覗いて
「鼻水出るでしょ。真っ赤に腫れてますわ」
口を覗いて
「こらインフルエンザやありませんな。バイキンです。扁桃腺の下のとこが腫れてますわ」
…ということで、吸入してもらい、薬をもらって帰る。

今日は新しい保育所の面談があるということで、息子は昼から帰ってきた(帰ってくると、いきなり私の顔の真ん中を指差して「おっきい、はな」と言う。余計なお世話じゃ! それに、鼻の大きい男はナニが大きいと言うんだぞ)。昼寝をしていないため眠そうなので、早めに夕食を摂ることにする。夕食を食べているときにも、瞳がうつろである。ぼんやり遠くを見ていたりする。キミがそういう状態になるなんて珍しいね。

息子は脱衣所で服を脱ぐとき、脱いだ服を洗濯機に入れるまでが自分の仕事だと思っているのである。それだけならいいのだが、洗濯機の口が見えないので自分を持ち上げろと要求するのだ。キミは重いから持ち上げるのは大変なのだよ。そこで、彼が洗面所で手を洗うときに使っている「いす」(踏み台)を洗濯機の横まで動かして、その上に乗って洗濯物を入れるように指導した。どうやら、このやり方で満足なようである。



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