1999年3月中旬の日記

■3月11日(木)
今日は仕事で遅くなったので、あまり書くことがないのである。帰宅途中で寄ったレンタルビデオ屋に
「頭文字D」のビデオの新作が出ていた。家に帰ると、どうやら借りてはいるようだが、カミさんはそれほど浮かれてはいないようだ。ホッとする。逆に「作画が悪い。リテイクしろ〜!」と怒っているのであった。

今日は通勤中に「日本売ります」の「紙か髪か」、「ダブル三角」、「機械の花嫁」を読んだ。「紙か髪か」は、突拍子もない設定を一つ持ち込んでその結果をシミュレートする、いかにもSFらしいSFである。こういう作品、今だって書けると思うんだけど、最近見ないような気がするなぁ。単に私が最近のSFを読んでいないだけだろうか。

ダブル三角」のオチには私もすっかり引っかかりましたな。何度も読んでいるはずだと思うんですが。このあたりが老人力かな。しかしこの作品、見方によっては見事に近年の状況を予言しておりますな。私のように弱い男には身につまされる話でございます。

それにしても、「ダブル三角」と「機械の花嫁」を続けて載せて、女性が怒らないかなぁ。「ユーモアSF」選といいながら、私はぜんぜん笑えなかったんだけれども。



■3月12日(金)
今朝は、両親とも風邪気味で寝過ごしたので息子が最初に起きた。かなりオシッコをしていたらしい。敷き布団を触って「びちょびちょや」と言っている。もうアクセントもすっかり関西弁になってるな。下手すりゃ両親よりもベタベタの関西弁かもしれず。これも保育所で年長の子から学習したんだろうか。

私が背広に着替えて居間に下りてくると、息子は「とーちゃ、おしごと」と言う。もう2語文は完全にマスターしたようである。

今日は、出勤時に「
日本売ります」収録の「宗国屋敷」を読んだ。この清冽な書き出しは若い者にはとても真似できませんな(歳取ってるからといって書けるわけでもないだろうが)。しかし、この作品も昨日の2編に続いて女性が読むと気を悪くしそうですねえ。昨日の続きになりますけど、小松左京という人はジェンダーの考え方に関しては最近の女性には抵抗があるかもしれません。「冒険する男、待つ女」というのは、私の長編小説ベストである「果しなき流れの果に」から最新作の「虚無回廊」まで一貫して貫かれているテーマの一つですから。人間は生物学的にそういうふうにできている、というのは事実だとも思うのですが。でも、この作品、私のようにか弱い男にはとても「ユーモアSF」だとは思えなかったんですけどね。悲劇にしか見えないっす。やはり、笑える作品を集めるなら「イッヒッヒ作戦」クラスのものを選んでもらわないと。

墓標かえりぬ」も、こういう「地に足のついた(ついてないって)」というか身近に感じるSFってのを最近読んでないような気がするんで、なかなか楽しかった。

三界の首枷」は好きだなあ。これは素直に楽しめる。自分が特殊だと思っていた男が結婚してみたら相手も…そして…という話。これも女性が怖い話なんだけどね。何だか、そういう作品を意図して集めてるような気がするんだけれど。まあ、ウチも私は自分が多少はオタクかもしれないとは思ってたのだが、結婚してみたらカミさんの方がはるかにオタクだったんですけど…関係ないか。

今日の会議はストレスが溜まった。胃が痛むし手に血液が流れなくて痺れてくるんだから。ストレスを感じると、人体はそれから逃がれようとして血液を筋肉に集めるので末梢や消化器が虚血になるのだ。だから、胃や十二指腸に潰瘍ができたりするのである。



■3月13日(土)
息子がウイルス性の結膜炎とやらになってしまった。「伝染するから気をつけるように」と言われても、2歳児に「目をこすった手でその辺を触らないように」などと言えるわけもなし。それどころか、顔を我々の衣服に擦りつけてきたりする。これは、ある程度の被害の拡散は覚悟しておいた方がいいのかな。

医者から帰ってきたときには、息子の右目は真っ赤であった。起きたときには目脂で目が開かないくらいだったらしい。医者から目薬をもらってきたのだが、これを点眼するのが一苦労である。二人がかりで押さえつけて注す。子供は目薬が嫌いだからねえ。2種類を両目に注さなければいけないのだが、息子は最初の薬を片目に点眼された時点で「おっけー」と言って終了をアピールする。キミはOKでも、我々はOKではないのだよ。

今日は、先週買えなかった
葛根湯の錠剤を買いに息子を連れて薬屋に行った。一時降っていた雨も上がっていたので今日は自転車で行く。走っていると、彼は空を指差し「ほこーき」と言う。飛行機のことである。「歩行器」と聞こえてしまうんだがなあ。まあ、昔は「ご・ご」だったんだから。

最近は彼独自の言葉が日本標準の用語に置き換わりつつある。以前は「ご・ご」というと、飛行機やバイクやイチゴのことだったのだが、それぞれ「ほこーき」や「ばいくぅ」や「いちご」になっているからね。

薬屋の前に着いて自転車を停め、息子を下ろそうとして店の方を見ると……店が無くなっているではないか。ビルの一階なのだが、ガランドウである。新装開店のための工事中だそうな。来て損したな。そのまま帰る。

今日も、行き帰りとも踏切で電車が見れた。ただ、帰りに踏切を過ぎてから警報機が鳴りだしたので、息子は電車を見せろと要求する。自転車を線路際に停め、通りすぎるのを見送る。電車が行ってしまい、彼が「おっけー」と言ったので走り出す。私は無駄足だったが、彼は満足したようである。ただ、家に帰り着いて自転車から降ろした後、よそ見をしながら歩いていたので、側溝の覆いの隙間から溝に脚を突っ込んでべちゃっと転け、泣き出す。粗忽なヤツだな、キミは。

夕食中にTBS系の「筋肉番付」を見ていたのだが、息子はTVに集中してしまって食事は上の空である。保育所でも、彼はTVに入っちゃう子だと言われているらしい。まあ、両親とも何かやりだすと入っちゃうヒトだからねえ。仕方ないか。集中力があるのは悪いことじゃないし(しばしば傍迷惑だが)。今日は「SASUKE」だったのだが、やはり凄い人間は体つきを見ただけでわかってしまいますねぇ。あれはただ筋肉がついているだけではダメで、締まるべきところは締まってなければいけない。それも特定の動き専用の筋肉ではなくて「実用的な」筋肉でなければ。息子は食事を終えると、両親の身体によじ登ったり膝の上から跳んだりする。やはりTVに影響されやすいんだな。

夕食後、カミさんが「ケーキを食べたい」と言いだした。一家三人で自転車に乗り、買いに行くことにする。しかし、すでにケーキ屋は閉まっていたのであった。仕方がないのでシュークリームを買って帰った。店の中で男の子がホワイトデーのプレゼントらしきものを何個か選んでいた。カミさんは「そんなにチョコレート貰えそうには見えなかったけど」とか言っていた。おいおい、格好はアレでもすごくいいヤツかもしれないぢゃないか。

今週も日本テレビ系「夜はヒッパレ」の話題である。スペシャルライヴでサーカスが、あの名盤「ABBEY ROAD」のB面のメドレーから演ってくれた。シブいねえ。私もあのあたりは大好きなのである。若い人にはわからない話かもしれないけどね。しかし、ああいう場でGLAYの曲をキーを上げて歌う人間がいるとは…

今は、先日買ってきたCD(ほとんどが10年ほど前の作品のようですな)のうち白鳥英美子氏の「BRAND NEW WORLD」を聴きながらこれを書いている。耳に障らないのでBGMとして聴くにはとてもよろしい。「my favorite songs」というだけあって、私の好きだった曲も何曲か入っている。

今、カミさんが回線を切ったのを確認してこれをアップするために部屋に戻ってきたら、か細げな女の声が聞こえてきてドキッとした。CDを鳴らしっぱなしにして出ていたのだった。



■3月14日(日)
昨夜も(というより今朝か)両親は遅かったのである。したがって、今朝も息子が最初に起きた。いつもと同じ時間である。私の布団の上に馬乗りになって「とーちゃ、お・き・て〜」と叫ぶ。ううっ、休日くらい遅くまで寝ていてくれ……と言っても無理だな。布団をめくりにくる。顔を触ってくる。うわ、キミ、結膜炎だろう。伝染るじゃないか。でも、身体が動かない。ゆるゆると起き上がると、私の枕をいじっている。そこも汚染されちゃったかなぁ。

今日は私が息子の世話をする当番なのである。やっとのことで起き上がり、いっしょに階段を下りる。先に立って下りていたら、彼は私の半纏の背中の部分を握ってついてくる。大丈夫か? 前を向いているから、足を踏み外してもすぐに反応できないぞ。寝室ではカミさんも起きたようである。下りている息子に向かって何か言っている。

朝食の用意をしていると、息子が「うんこ、でた」と言いだした。おいおい、そういうことは出す前に言え……などと言っても無理だというのはわかっているのだけどね。見てみると、かなり軟らかい便である。だから我慢できなかったんだな。お尻にべっとり付いてる。パンツを下ろしていたら脚にも付着してしまった。拭き取るのにかなりの枚数のウェットティッシュを消費した。

カミさんは朝食の用意をすると寝室に戻っていった。息子と二人で食べる。彼はおにぎり、私は納豆とご飯である。例によって息子は納豆を欲しがる。彼に食べさせていると足りなくなったので、また1パック出してきたのだった。

私がトイレに行くと息子は毎回ついてきて「おしっこ、でる」と言うので、便座に座らせてみるのだが、まだ何も出ない。トイレで用を足せるようになるには、もう少しかかりそうだな。今日も半分寝ながら絵本を読んでやっていた。こんな調子じゃ、彼の精神面の発達にもいいはずがないよな。でも眠いのだ。気がつくと午を過ぎていた。

カミさんに「スーパーに行くなら(牛乳やジュースが入っていた)紙パックを出してきてね」と言われていたので、使用済の紙パックをもってスーパーに買い物に行く。スーパーでは、パン・和菓子コーナーで「だんご3兄弟」を流している。子供たちがそれを取り囲んで歌っている。息子もカートの上で「追っかけ」のパートを歌っていたのだった。帰りにカミさんへのホワイトデーのプレゼントも買ってきた。

帰宅するとカミさんは起きていた。昼食はパンでも買ってくるつもりでいたのだが、カミさんはお好み焼きを食べたいという。息子を連れて買いに行く。帰りの踏切を過ぎたところで警報機が鳴りだしたので、息子が「でんしゃ、みる」と言いだすが無視する。我々はお好み焼きを運んでいるのだぞ。

帰宅してみると、カミさんはカレーヌードルを食べていた。待ちきれなかったという。ううっ。息子にお好み焼きを食べさせようとするが、カレーヌードルの方を食べたいと言う。……まったく、どいつもこいつも。アタマにきたので、カレーヌードルは私が食べてしまった。やっと息子はお好み焼きを食べはじめたが、食べ出すと気に入ったようである。パクパク食べる。

午後からお義母さんの手が空いているということなので、預かってもらおうかとカミさんが言う。むこうにはお祖母さんもいるし結膜炎が伝染るとまずいので、今日はこちらで面倒を見ようと思っていたのだが、けっきょく誘惑に負けて預かってもらうことにする。我ながら意志が弱いことではある。

息子を送り出すと、やはり少しホッとしてしまう。今日は悪い父親だったな。来週はもう少し頑張らなくちゃ。

息子を送り届けた後、カミさんは少し仕事をして昼寝をした。起きてきた後、二人で近所のラーメン屋に行く。けっこう繁盛しているようで気になっていたのだが、夜しか営業していないため息子がいるので行けなかったのである。二人でお食事なんて久しぶりだな。小雨の中、イチャイチャしながら歩く。

ラーメン屋は好みの味ではなかった。ラーメンと餃子しかなかったので食い足りない。近所のファミレスに足を伸ばすことにする。サンドウィッチとデザートを頼んだのだが、なかなか来ないので満腹中枢が満足してしまいそうだ。これはマズイ。出てきたサンドウィッチもかなりボリュームがある。胃袋にギリギリまで詰め込んだ。デザートもまた量が多い。入るところは別なのだが、こっちの方も一杯になってしまった。

家に帰ってカミさんの実家に電話すると、息子は眠ったところだという。昼寝させなかったので疲れていたのだろうとのこと。起こすのも可哀想だし、明日も結膜炎で保育所に行けないので、明日まで預かってもらうことにした。またちょっと気が楽になったのに気づいている自分がいる。

今日は
先日買ってきたCDのうちB.B.クイーンズの「真夏のB.B.クイーンズ」を聴きながらこれを書いている。やはり、上手いから安心感がありますな。軽く演っているように見えて破綻がない。

……今夜は早く寝れると思ったのだが、これを書いているとやはりいつもの時間か。



■3月15日(月)
今日は通勤中に「
日本売ります」の「女か怪物(ベム)か」、「四次元トイレ」、「四次元ラッキョウ」、「四次元オ  コ」、「蜘蛛の糸」、「仁科氏の装置」、「コップ一杯の戦争」、「サラリーマンは気楽な稼業……」、「模型の時代」を読んだ。ほとんどがシートショートである。だいたい「小松左京ショートショート全集」(1)〜(3)(ケイブンシャ文庫)に収録されていた作品なので、私の老人力は発揮されない。

ショートショート全集に収録されていなかった作品について書くと、「女か怪物(ベム)か」はありきたりのSFかと思いながら読んでいたのだが、最後で見事に締めてくれた。タダでは終わらないところがすごい。「四次元オ  コ」は……(掲載誌の中吊り広告にものすごい反響があったらしいが)文章を使って関西落語の語り口でこれだけ語れるというのは大変なことだと思いますな。なかなかこういうふうには書けないと思います。

模型の時代」は……よくこんな馬鹿な話が書けるもんだと思いますな。氏の作品には珍しく、説得力がまるでない(笑)。「蜘蛛の糸」にしても、あの作品をこんなに無茶苦茶にしていいんでしょうかね。「サラリーマンは気楽な稼業……」は途中でネタがバレちゃったので、ちょっとねえ。ネタだけの話だったしなぁ。

今日は雨の予報だったので、今朝はカミさんに最寄りの駅まで車で送ってもらった。帰りはいつもと違うルートで帰る。難波の本屋で小松左京先生の「男を探せ」を見つけた。即ゲットである。すると「日本売ります」は出てからだいぶ経ってたのね。どこの本屋も残り少なかったはずだ。

そういえば明日、ウチの会社から歩いて数分のところに日本最大規模の書店が開店するそうな。楽しみなことではある。でも、たぶん行く暇は無いのであった。ああ、イヤだイヤだ。しかしねえ、キタで双璧だった紀伊国屋と旭屋を合わせたのとほぼ同じ売り場面積ですか。その1割程度の三省堂書店でさえすごく広いと思っていたんですけどねえ。

今夜も帰り際に部長に捕まったので帰りは遅かった。帰宅したときには息子はすでに寝ていた。彼は、おばあちゃんの家ではいい子にしていたらしい。だが、我が家に帰ると急に泣き出して、しばらく母親にしがみついて離れなかったそうな。やはり、彼なりに我慢していたのであろうなあ。

カミさんに新書館から「サウス」の最新号が届いていた。カミさんの「美貌の食卓」が載る「小説Dear+」Vol.2の発売日が3月21日ごろから3月31日ごろになっている。う〜む、大丈夫なんだろうか。小説ウィングス文庫の「対なる者の証」の予告も載っていた。5月10日ごろ発売とのこと。(これも「ごろ」つき)



■3月16日(火)
今朝、カミさんが息子に目薬を注すのを見ていた。息子を横にしてティッシュを手に持たせ、点眼する。彼は、身体を固くして目はギュッと瞑っているが、抵抗しない。点眼されると手に持ったティッシュで眼の周りを拭う。偉いもんだねえ。普通なら泣いて暴れても不思議ではないと思うんだがなあ。どうしてウチみたいな夫婦にキミのように偉い子が生まれたんだかねえ。苦行が終わると、彼はティッシュをゴミ箱に捨てに行く。大きなモーションで投げ入れる……外れたらしい。ゴミ箱をどけて、その後ろから拾い出してきて入れ直す。最初からポイッと入れれば良かったんじゃないかと思うんだが。

カミさんは昨日から調子が悪いのである。鼻水と咳が出るらしい。昨夜、今日は仕事を休めないかと言われた。今は忙しいのだが、午前中だけでも休んで、息子を目医者に連れていき、行っていいと言われれば保育所まで連れていくところまではやることにする。

目医者は9時半からなのだが、早くしなければいけないので9時に着くように家を出る。受付は9時くらいからやっているだろう。医院に着くと、掃除をしているところだった。他の患者は誰もいない。「9時半からですよ」と言われる。どうも早く来すぎたような雰囲気である。待合室で30分も潰すのも何なので、電車でも見に行くことにする。9時だと店もほとんど開いてないしね。自転車で踏切まで行って、何台か電車が行き来するのを見る。これで満足なんだから安上がりなものである。

9時25分くらいに医院に戻ったが、まだ他の患者はほとんどいない。こりゃ9時半に来てもよかったな。診察は、器具を使って私の膝の上に乗った息子の眼を覗くだけで終わった。洗浄くらいはやるのかと思っていたんだがな。保育所は明日からにしてくれということである。だったら、コイツを今日一日どうするか考えないといけないな。私も丸一日休むわけにはいかないし。

家に帰ると、カミさんも医者から帰ってきたところだったようだ。鼻と喉が炎症を起こしているらしい。先日の私と同じ症状ですね。息子は、午後からお義母さんが預かってくれるそうである。有り難いなぁ。こういうときに頼れる人がいない環境で子育てすることを考えると気が遠くなりますな。しかし、それでも息子には負担を強いることには変わりない。まあ、こういう状況だから我慢してくれ。カミさんは「おばあちゃんの家だから緊張しなくていいのよ」と言い聞かせているが、私も両親の実家に行ったときは緊張してたからなぁ。私の場合、遠方だったので数年に一度しか行かなかったのだけどね。

私が息子を電車でカミさんの実家に連れて行ってから出社することにする。肩に仕事道具の入った鞄を掛け、右手に息子の荷物の入った鞄を持ち、左手で息子の手を引いて駅まで歩く。息子は歩くのが遅い(今日は特に)。途中で、タクシーを使えばよかったかなと少し後悔したのは秘密である。まあ、息子が文句も言わずに歩いてくれるだけでも感謝しなければ。

一人で歩く倍以上の時間をかけて駅に着いた。ホームへの階段を上っていると、ちょうど電車が出るところだった。自分一人だけなら走れるのだが、子連れだと無理である。息子は普通電車を待つ間、駅のベンチに座って電車が行き来するのを見れてよかったのだろうけどね。駅周辺では、線路を高架化するのに伴う再開発の工事をしている。大きなクレーンがゆっくり動くのを、息子は興味深げに見ていた。

乗り換えの駅でも何台も電車が見れて息子は機嫌がよい。トイレに入ろうと思ったが、ずいぶん混雑しているようである。息子を放って用を足すのは危険だな。我慢しよう。

息子を送り届け、昼食をいただいてカミさんの実家を辞す。私が出ていくときに息子は「かーちゃん、くる」と言う。やっぱり母親がいいんだな。駅まで歩いて電車に乗り「
日本売ります」の「ぬすまれた味」を読んだ。これは、中学のとき、最初に読んだ短編集に入っていたんだ。いまでも内容を覚えているから、よほど印象が強かったんだな。で、それでも面白い。アイデアとオチ、この組み合わせが絶妙だな。やはり、SFはこのコンビネーションですよ、うん。

例の日本一の売り場面積を誇る「ジュンク堂書店」にちょっと寄ってみた。こういう所に開店日にホイホイ行くというのは、ワタクシ的にはアホらしい行為だと思っているのだが、やはり好奇心が勝ってしまった。本が好きだしね。日記のネタにでもしようという魂胆もある。さすがに広い。だが、人がいっぱいいるので、けっきょく混んでいる。TV局も来ていたようだ。

あれだけ広いと、地図がないと遭難しそうですな。なんせ、全部回ると2kmくらい歩かねばならないらしい。店員も相当の人数配置しなければならないだろうし、レジもかなり混んでいた(しばらくすれば安定するのかもしれないが)。まあ、あれだけ本が多くても無い本はやっぱり無いんですけどね。アタリマエだけど。ざっと見て、それは実感しました。逆に、物理的な実体を持った「本」というものを並べているので一種類の並べ方しかできないというのが、このスケールの大型書店の問題点ですな。たとえば、文庫本なんかは出版社別に並べてあるのだが、著者別に並べてくれた方がありがたい場合も当然出てくるでしょう。でも、これだけ本が多いと、ある作者の本を一通り見て回るだけで、そうとうの距離を歩かねばならないです。その点、ある程度求めるものがはっきりしているならインターネットで注文した方がラクではありますね。立ち読みとか、ブラブラ歩きながら本を選ぶなんてことはできませんが。

16:43頃に地震があった。古いビルの11階にいたので、けっこうゆらゆらと揺れた。まず重いものを遠くで落としているような縦揺れが、どどどん、どどどん、と何回か来て、それからゆ〜らゆ〜らと揺れはじめたのである。

そうか、今度のCASSIOPEIAMP3プレーヤーにもなるのか! これもPDAの進化の一つのカタチ、だな。電池の持ちは悪いようだけど。

職場から帰る間際になってややこしいメールが続けて来て、今夜も遅くなった。帰りの電車の中で「日本売ります」の「地球になった男」と「カマガサキ二〇一三年」を読んだ。「地球になった男」は、何だかブンガクしてる……っていうかぁ、ブンガクに対するカウンターパンチのような気がする。どこがそうだとは言えないけれど。でも、性に関してよくわかっていなかった中学生時代と今とでは、こういうセクシャルな表現を読んだときに喚起されるイメージがずいぶん違うもんだなぁ……と、むかし読んだときの感覚を蘇らせながら思ったのだった。

カマガサキ二〇一三年」は…こういう失業者の悲哀みたいなものは、戦後の混乱期を経験した世代でないと書けないかもしれませんねえ。解説には「ほとんど完璧の構成を誇る大傑作」と書いてあるが、私はそれほどだとは思わなかったです。私らみたいに豊かな時代に育った世代には、なかなか共感しにくいような気がしますね。「現代社会の矛盾」というのを言いたいのはわかるのですが、それだったら「比丘尼の死」のような「見せ方」の方が心に響いてくるような気がします。まあ、これは私が「泣かせるSF」が好きなせいなんでしょうけどね。

今日はカミさんが夕食の用意をできないので、コンビニで弁当を買って帰宅したのであった。



■3月17日(水)
今日は通勤時に「
日本売ります」の「フラフラ国始末記」を読んだ。いやぁ、いいですねえ、こういうの。出勤時に途中までしか読めなかったのだが、続きが読みたくて仕方なかった。この若さゆえの無鉄砲さというのが、とても羨ましかったりします。私は無鉄砲じゃなかったもので。計画はしてるんだろうけど、これはやっぱり無鉄砲だよな。

今日、ワニのNEW新書の「食品添加物危険度事典」(KKベストセラーズ)を買った。現代人としては、こういう本は必携でしょうね。食べるもののことなんだから。けっこう恐ろしいことが書いてあります。大量に摂取したときの現象ですけど。それでも、避けられる危険は避けた方がいいと思うのですけどね。保存料などは仕方のない場合もあると思いますけど、着色料なんか入れる必要無いじゃん、というのが私の考えです。最近の清潔志向の若い人がこういうことに無頓着だったりすることが私には不思議なんですが。

今日カミさんに、月末発売予定(笑)の「小説Dear+」に載せるコメントの依頼が来たらしい。「今頃かい」とカミさんは言っていた。自画像も描かねばならないらしい。どうするんだろう。5月発売予定の「対なる者の証」も、まだゲラができていないとのこと。やはり駆け出しは後回しにされるのだな。原稿は数ヶ月前に送っているはずなのだが。「来月になったら、同人誌に入っちゃうぞ」とカミさんは言っている。

息子は今日の夕方までカミさんの実家で預かってもらう予定だったのだが、カミさんの調子が悪いので明日の朝までにしてもらったそうだ。今日も帰りが遅かったので関係ないのだが。でも、明日の朝も会えないな。

仕事の状況が最悪である。思い出すのも鬱陶しい。



■3月18日(木)
今日も通勤中に「
日本売ります」の「サマジイ革命」を読んだ。いや、ハチャメチャでございますな。老人やゲイをこんなにムチャクチャに書いていいんだろうか。今だったら、ぜったいに世に出せそうにないな。あとで本人(のパロディ)がさらにムチャクチャな目に遭わされていますが、そうすればいいというものでもないと思うんだがなぁ。筒井康隆さんや星新一さん(らしき人)も出てきますね。御三家勢揃いであります。まあ、このあたりのハチャメチャさには当時のSF作家たちの馬鹿話の片鱗が感じられるような気がいたしますね。

ラブひな」(赤松健)を買った。こういう可愛い絵も好きなのである。ただ、この可愛さに飽きたとき、さらに読み続けさせられるかどうかが勝負だよな。えっち度をエスカレートさせて自滅、ということにはなってほしくないものだが。(講談社のサイトを見ていて気がついたのだが、あの会社、社長が女性なのね)

「アストロ球団」の単行本が出ていた。ずいぶん厚い。昼休みに本屋で見つけて「ムチャクチャな話だよなぁ。絵も下手だし。昔はこういうのを夢中になって読んでいたんだよな」と思いながらパラパラ読んでいたら、知らないうちにハマってしまっていた。ヤベ、昼休み終わっちまうぜ。

帰りには「日本売ります」の「本邦東西朝縁起覚書」を読んだ。これはまた、ホラーからドタバタ、シミュレーションまで物語のいろんな要素がテンコモリですな。日本という国にとって、これは非常に微妙な問題なのでありますが、ドタバタな話にしてあまりマジにならないようにしている。でも、それであっても、これはヤバいかもしれないな。この日本は本当に正統なのか、ということを追究してしまうのは。私の薄々な知識でも、疑問に感じてしまうくらいだから。

今夜も遅くなった。午前様である。カミさんへの土産に修羅の門(25)」を買って帰ったら、私が食事をしている間、カミさんはマンガに入ってしまって会話が弾まなかった。誤算であった。容易に予想できたことなのだが。

今日も息子は帰っていなかった。カミさんの実家から保育所には連れていったらしいのだが、「今夜も泊めていいよ」というお義母さんの言葉に、またフラフラと従ってしまったのだそうな。さすがに娘の性格はよくご存じである。お義母さんも、昼間は保育所に預けるならラクだからね。



■3月19日(金)
今日から、
小松左京先生の「男を探せ」を読んでいる。今日は遠方の発注元に行ったので、たくさん読めた。話好きの上司といっしょだったので、フルに読めたわけではないが。「長い部屋」は……う〜ん、やはりSFとミステリの結合はマズイんじゃないでしょうか。ミステリってのは制限があるから面白いんだから、そこにSFの道具を持ち込んじゃ反則ですわな。ボクシングの試合で蹴りや寝技を使うようなもんだ。まあ、作者もわかってやっていることなんだろうが。途中でネタバレだしね。

長い部屋」「幽霊屋敷」「おれの死体を探せ」は、シリーズものなんですね。だんだんミステリから離れてSFになってゆくので、面白くなっていきます(私にとって、かな)。「小説推理」に掲載する作品だったので、最初はミステリ風味が強かったのでしょうか。後の方はもう探偵が主人公のSFですからね。SFになっちゃったせいか、それ以降掲載されていないようですが(笑)

今日、家に帰ると、カミさんが息子を寝かしつけているところだった。着替えていると寝室でカミさんと息子の気配がする。今日はパジャマを寝室に置いたままだった。寝室に入ると息子を起こしちゃうな。仕方がないので、下着の上から直接半纏を羽織って居間で本を読んでいたら、カミさんが寝室から下りてきた。私の剥き出しの脚を足先で触る。冷たいので声を上げたら喜んで何回もやる。すごく楽しそうだ。

カミさんが印刷屋から同人誌の新刊「LITTLE WING」を車で取ってきた。先日、私が読んでイタかったヤツである。まあ、作者の思い入れが伝わってくるからいいんじゃないでしょうか。相変わらず誤字は多いけど。でも、奥付の印刷屋の名前を間違えちゃいけませんぜ。

アクセスカウンタが500を超えた。いつ公開したか、もう記憶の彼方なのだが(笑)、今年の1月だったから1日平均で7くらいか。たぶん、ほとんどが身内だな。

我ながら、非常に疲れている。「探偵!ナイトスクープ」を見たくて、カミさんが寝た後も居間でテレビをつけていたのだが、身体を起こしていられない。横になったまでの記憶はあるのだが……気がつくと明け方であった。ちょっと風邪を引いたかもしれない。



■3月20日(土)
今朝は、明け方に居間で目を覚ました。昨夜、睡魔に耐えきれずに横になってそれっきりだったようだ。眠いが、まだ昨日の日記を書いていないし、昨夜は通信していないし
テレホタイムであることもあり、起きておくことにする。息子が起きてきたときの世話もしなければならないだろうしね。

テレホタイムが終わってから落としてきたデータにざっと目を通し、腹が減ったので居間に上がる。昨日カミさんが買ってきたケーキに一口かぶりついたところで、階上からドンドンいう音が響いてきた。息子が誰か呼ぶ声も聞こえてくる。階段を上がっていくと、寝室の扉を開けて息子が立っていた。カミさんが雨戸を開けている。おや、もう起きるのか。そういえば昨夜、今日は保育所を休んで目医者に連れていくと言ってたな。でも「今日は保育所に連れて行くわ。明日もあさっても休みだから」と言う。

居間に下りて着替えさせていると、息子はパンツを脱いだところでオマルの方に歩いていき、指差す。ん、ウンチをしたいのか? カミさんが「昨日いっぱいしたから、もうしないと思うけど」と言う。そうなのか。息子がシャツの裾を持ち上げてオマルに座るのを見て、夫婦して驚く。見るたびに驚かせてくれるなぁ。そして、すぐにシャーッとオシッコが出だした。ううむ、もうそこまで制御できるようになっているんだねえ。

保育所から帰ってくると、息子はオモチャ入れに直行してプラレールを持ち、床の上で走らせて遊びはじめた。一人で遊んでいる。こうしてくれれば楽である。手で持って走らせているのを、顔を床につかんばかりにして横から見ている。飽きずに見ている。触った拍子にスイッチが入ってモーターの駆動する音がしだすと、立ち上がって私の膝の上に逃げてきた。キミ、怖いのか、あれが?

息子は、スープを飲むのも上手くなっている。スプーンですくうのも、ほとんどこぼさないし、残り少なくなると左手で容器を持ち上げ、右手に持ったスプーンでかき込むということもできるようになっている(これは韓国あたりではやってはいけないことだと聞いたことがあるが)。服を着るのも速くなっている。座ってズボンに脚を通すと、素早く立ち上がって引き上げる。両脚を踏ん張って前と後ろから引っ張る。もうすっかり一人前の格好である。

今日、カミさんは新書館にコメントと自画像をファックスで送った。自画像には私がデジカメで撮ってプリントした息子の生後数ヶ月の写真を使ったようだ。カミさんは「可愛いわねえ」と言っていたのだが、編集さんから確認の電話がかかってきたときに「……可愛いですね」の前にがあった、と言っていた。やはり親バカであろう。

カミさんに読者さんから、ここを見つけて読んだというメールが来たという。サーチエンジンで見つけられたんでしょうか。そうであれば、ここを読む必要のある人のために登録した甲斐があったというものですが。……でも、また「赤裸々」だと書かれていたそうだが、そんなに赤裸々なんだろうか。本人たちはそういうつもりはないのだが、多方面からそう言われるということは…(認識してないのが問題かもしれない)。



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