2001年 3月上旬の日記
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3月1日(木)
疲れているはずなのに、今朝も6時前に目が覚めた。小用を足して寝直すが、それでも7時には起きてしまった。昨夜も息子と一緒に寝てしまったので、日記を書いて上げる。7時半を過ぎてもカミさんは起きてこない。まあ、今日も息子は保育所を休むから、私が独りで朝食を食ってしまえば彼女が起きる必要はないだろう。食パンを焼いてチーズと野菜ジュースで朝食を終える。着替えるために寝室に入るとカミさんが目覚まし時計を引き寄せて時刻を確認しようとしたので「寝てていいよ。シンジ(仮名)を頼む」と言った…ところで息子がむっくりと起き上がった。両親二人して「まだ寝ててええで」と言うが目をこすりながら「おきたい」と応える。仕方ないなあ。だったらカミさんも起きねばならないね。

今日も引き続き通勤中に「異形コレクション 幽霊船を読んでいる。今日は往きに石田一氏「死の箱舟」を読み終えた。少し間が空いたのでどういう話だったか忘れかけていたが、それでも読ませてくれましたね。次の竹河聖氏「さまよえるオランダ人」も読ませてくれたのだが、アレとアレをくっつけただけの話というのは安易すぎるんじゃないだろうか。帰りに草上仁氏「パンとワイン」を読み終えた。今回も素晴らしい出来ですな。最後はもう少しわかりやすく描いた方がいいんじゃないかとは思うけど。しかし、この人の個人短編集も何冊か読んだけど、このアンソロジーに入っている作品の方が圧倒的にパワーが高いように感じる。競作というのは「勝負の場」であるという認識が徹底しているんだろうね。作家たるもの、そうあるべきだと思うのである。

職場近くで地下鉄を降り、歩き始めると目の前に真っ黒な壁が立ちふさがった。人である。しかしデカい。横にもデカいが、縦にもデカい。私も180cm超なのだが、その私が見上げるくらい高い。185は確実、下手をすると190くらいあるかもしれない。しかし、よく見ると髪が長い。持っている鞄も真っ赤である。ひょっとして、これは女か? …ということで、前に回ってみるとやはり女性であった。しかし、こんなに巨大性を見たのは記憶にないなあ。こういうキーワードを入れておけば、何人かはサーチエンジンで飛んでくる人もいるんじゃないだろうか。残念でした。ウチはそういうサイトじゃありません。

今日は月初なので先月の報告書を上げなければならない。部下が入力するのを待っていたら20時近くになってしまった。家に帰ると21時過ぎである。浴室の電灯が点いていたが、中から息子の声が聞こえてこない。どうしたんだろう、と思いながら玄関から上がると、階段の上から「とーちゃん」という声とともに息子が顔を出した。母親が風呂に入っている間、独りで待っていたようだ。偉いものである。今日は熱も下がって元気が有り余っていたそうだ。私が上がっていっても、そのあたりを跳ね回っている。私が夕食を食べはじめると、カミさんが息子に「今日は父ちゃん遅いから母ちゃんと寝よ」と言う。いつもは「とーちゃんと、ねる」と言うのだが、今日の彼は素直に母親と一緒に上がって行ったようである。

そういえば、今週のモーニング岳人列伝村上もとか)の一編が載っていた。私も生まれて40年近くマンガを読んできているが、その中でもこの作品は最も好きな作品の一つなのである。それはいいのだが、何でいきなり旧作を載せるのだろう。誰か急に原稿を落としたのだろうか。この雑誌であれば、レベルの高い原稿のストックはいくらでもありそうなもんだが。それでも掲載する水準に達してなかったということなのかな。そうであれば、おそるべき見識ということになるが。載っている作品のレベルの高さを見れば(好みは分かれるが)、そう思えないこともないな。この雑誌の恐ろしいところは、ΠΛΑΝΗΤΕΣ(プラネテス)』のように、品質の高いものを提供するためなら不定期の連載であっても許されるということである。どこぞの雑誌(笑)のように作家を酷使していない。野球でいえば、実力派のピッチャーが揃っているのでローテーションを余裕を持って回せる、というところか。連載が一つくらい休んでも、物足りないなんてことを感じさせない。井上雄彦氏がこの雑誌に移籍したのは象徴的なことではあるな。



3月2日(金)
進研ゼミのCMがエヴァしている。あそこまでやれば、立派というしかないか。…とか言いながらGAINAXのサイトに行ってみると…こんなモン売っとるんかい!! ったく、儲けのためには手段を選んでないな。

昨夜はカミさんが息子を寝かせてくれたので、久しぶりに夜中に通信できた。タガが外れたようにやっていると、気がつくと4時を過ぎていた。馬鹿者である。おかげで眠い。起きても身体中が痺れたようになっている。いかんなあ。

今日も引き続き通勤中に「異形コレクション 幽霊船を読んでいる。今日は往きに菊池秀行氏「渡し舟」を読み終えた。なかなか凄い話でしたなあ。いつもはホラーを書いているのに、いかにもみんながホラーを書きそうなこういうテーマのときにこういう作品を持ってくるとは、なかなか一筋縄ではいきませんなあ。そして、帰りに田中文雄氏「シーホークの残照(または「猫船」)」を読み終えた。これもあんまり面白くない。これでこの本も読了である。やはりこのテーマでは、私は読んでいてあまり楽しくなかったなあ。

月曜日はまた5時に起きて東京に出張である。なんか、東京の発注元が際限無しに仕事を増やしているらしい。私を東京に常駐させろ、などと言っているという情報も入ってきてるし。方針も一定してないし、今までやってきたことが無駄になりそうな雰囲気もあるので、モティヴェイションは下がる一方である。今日は19時前に帰る。家に着くと息子は階段の上から「はやく、かえってきた?」とか訊く。おいおい、わからんのか。「早く帰ってきたよ」と応えると、「はやく、かえってきたって!」と言いながら母親の方に駆けて行った。

私がウガイをして洗面所から出てくると息子は「とーちゃんとーちゃんとーちゃん…」と言いながら下りてくる。階段から下りたところで、指を折りながら「いち、にい、さん、しい…」と10まで数を数えてみせる。はいはい、よくできました。

妻子は今日はTVでフィフス・エレメントをやっているのを観ている。なかなか面白そうな映画でございますね。カミさんは「これ、シンジ(仮名)には分かりやすいみたいね。見ただけで敵味方が判るし」とか言っている。なるほどねえ、アメリカ的単純さというヤツか(ちょっと違う?)。息子は宇宙人の歌を聴いて「じょーずやねー」とか言っている。そうだねえ。でも、アレは人間の声をサンプLィングしたもので「演奏」してるみたいだから「歌」とはちょっと違うんだけどね。

カミさんのパソコンの調子が悪いと言っている。例の画面が乱れる症状が再発しているようだ。そこで、やっとデータをバックアップする気になったようである。我が家のプロキシサーバのFDDがネットワークで共有してあるので、そこにバックアップするように言う。しかし、やり方を今まで知らなかったのか。失敗したとか言うので見てみると、Webから落としてきた小説だけで8MB以上ある。テキストデータだろうからそんなに無いんじゃないかと思ったんだがなあ。原稿用紙に換算すると1万枚超ですか。改行とかを考えるともっと多いな。貯め込んだものである。フロッピーの容量に合わせて分けてバックアップするしかないか。他のPCのディスクにバックアップする方法もあるが、サーバのディスクを共有するのも問題あるし、あんまりいろいろな方法を教えても混乱するだろうから、もっとも単純な方法でいいだろう。フロッピーにバックアップする方法を知っておけば、ワープロ専用機とのデータのやり取りもできるしね。しかし、それじゃ2HDを使った方がいいんじゃないか。しかし、2HDは持っていないと言う。前の書院では2DDしか使えなかったからねえ。仕方がないので、私の部屋から未使用の2HDを6枚ほど掘り出してきて渡す。Macintoshフォーマット済みの製品だが、フォーマットしなおせば使えるだろう。



3月3日(土)
今朝も7時前に起きて日記を上げる。今日は私が息子を保育所に送っていったのだが、彼は行きたくないようである。保育所に着いてからも、「かゆい」とか「せき、でる」とか言っている。何をするにも手を握って一緒に来てほしいと言う。そして最後には保母さんに抱かれて泣きながら別れたのであった。

そして保育所からの帰りに散髪に行った。10時前だったが、もう開いている。働き者だな。値段もシャンプー抜きで\1,600である。商店街に店を構えてこれだけの設備を維持して技術のある人間を拘束していてこの値段は安いと思うな。しかもこの店、オーナー(?)が言葉が不自由なので無意味な会話を交わさなくてもいいのも有り難い。いや、会話を交わしてなくても「いま、会話を交わしてないことには何か問題があるのだろうか」などと考えなくていいのがラクなのである。言葉が不自由だというのは普通はハンディキャップなんだろうが、私みたいな人間にはメリットになる場合もあるのだ。

息子は帰ってきて居間の戸を開けるといきなり「とーちゃん、かわいくなった」と言う。おいおい、「散髪するイコール可愛くなる」ではないんだぞ…と言おうと思っていたらカミさんが「母ちゃんもそう思うわ」と応じた。おい、世帯主を何だと思っているのだ。

カミさんが「お父ちゃん、カリ城観たい」と言うので、自分の部屋からヴィデオテープを掘り出してくる。いったい何度目になるだろう。しかし、カミさんが再生できないと言っている。えー、この前返してもらってから何もしてないぞ。見てみると、テープが切れている。シェルを開けてみるとテープが見えないのだ。うぎゃー、映画に関しては金を出せば何とかなるけど、20年近く前の関係者の映像とかCMとかは金ではどうしようもないと思うのだ。たぶん、テープを繋げば何とかなると思うんだが…再生しても一度だけだな。

今夜は久しぶりにカミさんが息子を寝かせてくれた。しかし眠い。ここ1週間、息子と一緒に寝ていたせいか。通信していても、何度も気を失う。どうにも耐えられなくて、けっきょく0時半過ぎに寝たのであった。



3月4日(日)
隣で息子がもぞもぞ動いているので目が覚めた。時計を見ると9時半である。今朝は早起きできなかったな。彼と一緒に起きる。居間に入ると彼はさっそく絵本を読み始める。図書館で借りてきたトトロの本である。本を開いて彼が言う。
「ととろ、いっぱいやな」
「何が?」
「じぃ」
「そうやな、早いこと、字、読めるようになったらええな」
「まだ、よめれへんもんな」
でもまだ彼は、ひらがなを繋げれば言葉になるということをイマイチ理解できていない。漢字はアイコンとして認識しているみたいなんだけど。

今朝も息子は空腹を訴える。「ぼく、ぱんが、いい」とか言っていたが、そろそろ納豆を食わないと賞味期限がヤバいので米の飯にする。空腹だから、それでも文句を言わずに食うのである。箸を持たせているのだが、何かするたびに鷲掴みになってしまうので、そのたびに持ち方を指導する。そのうちに疲れてきたようなのでスプーンとフォークに戻した。

食事を終えると息子は「かーちゃんは?」と言いだした。「まだ寝てるで」と言うと起こしに行くという。一度は止めたが、それでも彼は起こしに行ってしまった。どうやら、昨日カミさんが「桜島線乗りに行こか」と言ったのを覚えているらしい。しかし、彼は独りで下りてきた。起きなかったのか。それでも、しばらくすると階上で雨戸を開ける音が響いた。ようやく起きたようだ。息子は嬉しそうである。

カミさんは桜島線に乗ってから日本橋に行くという。ドキャが\9,900になったので、さっそく買いに行くのである。私は遅れて出て日本橋で合流することになる。駅で電車を待っていたらPHSにカミさんから電話がかかってきた。「シンジ(仮名)がもう一往復したいと言ってるんだけど、いいかしら?」彼が主張しているのか。珍しいな。私も時間がかかりそうだから乗ってやって下さい。あとで聞くと、彼はシャトル列車に乗りたかったのに乗れなかったので不満だったそうなのである。そういうことにはスゴい執着があるようだねえ。しかし、それが4種類あるということを知ったらどうなるんだろう。

日本橋のゲーム屋で合流するが、息子はもう帰りたいようである。自分の用事は済ませたし、疲れてるようだからね。ちょっと迷惑だが、息子を負ぶって歩き回る。彼に日本橋に悪印象を持たれたら大問題だからね。そして、以前来てカミさんがチャーシューが旨かったと言っていたラーメン屋で遅い昼食である。彼女は「いつも行ってるラーメン屋ほど後は引かないわね。チャーシューは確かに美味しかったけど」とか言っている。その点に関しては同意見ですな。まあ、あのラーメン屋が特別なんですけど。

そのまま帰途につく。けっきょく私は日本橋まで来てラーメンを食っただけであった。帰りの電車の中で息子がしんどそうにしているので「寝てええで」と言うと頭を座席にもたせかけて目を閉じる。彼が電車の中でこういう状態になるとは、よほど疲れているのだなあ。最寄り駅に着き、スーパーに惣菜を買いに行く車の中で彼はついに眠ってしまった。スーパーに着き、車を降りるときも機嫌が悪い。また負ぶって行く。それでもカートに乗せて店内を移動していると元気になったようだ。カミさんがスーパーの一角に店を出しているオバサンから惣菜を買ったのだが、息子はオマケでスルメに甘辛いタレをつけたものをもらって囓っている。彼は口内で長時間噛まねばならないイカの類はあまり好きではないようなのだが、これは気に入ったようである。家に着いたときにも口から脚が2本出ていた。「スナック菓子なんかよりこういうのを食わしてた方がいいよな。アゴが鍛えられて頭が良くなるし、静かな時間が長続きする」などとカミさんに言うのである。

今日は私も眠い。今朝は遅くまで寝てたんだがなあ。息子は今日も私と風呂に入りたいというが、しんどいので母親と一緒に入ってくれるように言う。しかし彼は母親は嫌いだと言ってゴネる。挙げ句の果ては脱衣場で「ひとりではいりたいっ!」と言って母親に「そんなら独りで入れ」と言い放たれてまた泣く。こらこら、思いつきでそういうこと言っちゃイカンぞ。



3月5日(月)
今日は朝から東京に出張なのである。5時前に起きねばならない。週の初めからこれはツラいなあ。6時前に家を出るが、以前のように真っ暗ということはない。季節の変化を感じるひとときである。しかし、凄い強風である。帽子を飛ばされそうになる。アゴを引いて走り出すと、今度は自転車のハンドルを取られそうになる。こんなに強い風はここしばらく記憶にないな。向かい風だというのがまたツラい。昨日は強力な低気圧が来て嵐になるという予報だった(けっきょく嵐にはならなかった)のだが、その余波だろうか。

地下鉄に乗っていると下腹部が痛くなってきた。しかし、途中でトイレに入っていては予約しているのぞみに乗り遅れる恐れがある。なんせ新大阪まで1時間かかる家から出発して6時台の列車に乗らねばならないので余裕がないのである。必死で耐える。新幹線の改札に入ったときには出発まであと15分であった。これから15分以上も耐える自信がない。15分あれば何とかなるだろうと駅のトイレに向かう。しかし、もうそこで私の心の中のロープの繊維が何本か切れる音がプチプチっと響いた。あぁっ、トイレまで保たないかもしれない、という予感が背筋を駆け抜ける。必死で肛門を引き締めて歩く。何とかトイレに入ったが……個室が全部塞がっているっ! うがあああああ、助けてくれー。身をよじり、歯を食いしばって耐える。歯がギリギリと音を立てる。人が並んでないのがせめてもの幸いである。もし並んでたら真剣に前の人にお願いしてたかもしれない。しかし、こういうときに限ってどの箱からも人が出てこないのである。全員入ったところだとして、あと何分くらいかかるんだろう、などと貧血を起こしそうな頭で考える。後ろに人が並び始めた。これで順番を飛ばされたらケンカになるだろうけど、ケンカしたら漏れちゃうよなあ…などという妄想が頭の中をグルグルと駆け巡る。人が出てくる前には前兆があるはずだ、などと箱の中に耳を澄ます。しかしどの箱からも音がしないし音がしてもすぐに静かになるし水を流してもすぐには出てこないやつもいるもんなあんまり遅くなるとトイレに入れても電車に乗り遅れるかもしれないしな個室が空いたときが出発5分前だったらどうしようもうここから何メートルも動けないぞ諦めるしかないよなこんなことになるんだったら地下鉄の駅でトイレに入っておくんだったな馬鹿なことをしたなでもあの時にはこんなことになるとは思わなかったからなあの時点ではまず新幹線の駅まで行くのが最善だよなもし漏れたら出張自体が中止になっちゃうよなどうやって言い訳をしたらいいんだろう……などと考えながら永劫にも近い時間を過ごしていたら、扉が開いた。割り込まれることもなくさっそく飛び込み、コートも脱がずにズボンを下ろしてしゃがみ込む。はぁぁぁぁ、助かった。

今日から少女の空間(徳間デュアル文庫)を読み始めている。まずは小林泰三氏「独裁者の掟」を読んだ。なかなかエレガントな構成であるが、それがちょっと解りづらい。次の青木和氏「死人魚」は良い話でございましたが、どっかで読んだような話ですな。たしか、小松先生がこういう話を書いていたような。続く篠田真由美氏「セラフィーナ」も、好みのテーマではなかったがなかなか読ませてくれましたね。

往きの新幹線で座っていると、また便意を催してきた。窓際だし、早朝の列車なので隣が眠っていたりするので非常にツラい。車掌さんが検札に来たので、そのタイミングでトイレに駆け込む。使ってみると、今までと少し様子が違う。そういえば700系の大便用トイレに入るのは初めてだったな。水を流すのがセンサーになっているのは他でも見たことがあるのだが、チョロチョロと水が流れた後、バッ!という音とともに底の小さな穴に吸い込まれていく。どういう仕組みになっているのだろうか。

そして帰りの途中から六番目の小夜子恩田陸:新潮文庫)を読み始める。うーーん、圧倒されて言葉が出ない。凄い。読み終えてまず思ったのが「なんでこんな話が描けるんだろう」ということであった。とても同じ人間が書いたとは思えない。とてもかなわないなあ、と思ってしまう。ふつう小説を読んでいてもこういうことを感じることは滅多にないのだが、これは逆立ちしたってオレには無理だと思わされてしまう。そして、読んでいてすごく懐かしい感じがした。それは、高校生活を描いているということばかりではなく。著者があとがきで「NHKの少年ドラマシリーズへのオマージュとして書いた」と述べておられるのを読んでポンと手を打った。そうか、確かにあの匂いがする。大したものである。これが処女作ですか。大幅に加筆されているとは書いてあるが、それでも凄いものである。しかも、これが審査員に酷評されたり絶版になっていたりしたとは…

しかし、『星虫』『イーシャの船』といい『メルサスの少年』といい、新潮社のファンタジーノベルシリーズって、ひょっとして凄い事業じゃなかったんだろうかねえ。

家に着いたのは22時近かったが、どどどどっと走る音がして息子が下りてくる。彼は私に向かって言う。
「あと、ふたつねたら、えんそく、いくねん」
「へえ、どこ行くん?」
「てんのーじどうぶつえん」
「何で行くの?」
「ばす」
すごい、何だか情報の伝達ができてるぞ。

今夜はカミさんが息子を寝かせてくれる。今日は私はまだ通信できてないからね。有り難いことである。腹が減ると胃が痛くなってくるので煎餅を少しずつ食う。潰瘍かなあ。

通信を終えてパソコンをしまってから、来週出張の予定が入ったのでホテルの予約をしなければならないのに気がついた。会社のパソコンは古いので旅の窓口のサイトで予約できないのである。これでコンピューターの会社だって言ってるんだからなあ。私は恥ずかしいぞ。しかし、インターネット時代になってホテルも横並びで条件を比較できるようになったのは、私のように値段が最優先の人間には便利なことである。最近はWeb上ではディスカウントするホテルも増えてきたようだからね。ホテルの側はたまったものではないだろうと思ったりもするんだけれども。



3月6日(火)
家族で1人の幼児をリンチして殺した事件ですが、酷い話ですな。いったいどういう家族なんだ、こいつらは。施設から帰ってきたから「よそ者」だったのかもしれんけど。2歳の子供でも過酷な環境に置かれればこういう「生き残るための知恵」というのを身につけるんだ。そしてそのせいで死んでしまうとは。なんて哀しいことなんだろう。

昨日は朝5時に起きて東京まで日帰り出張したので、今日は少し遅く出社するのである。おかげで妻子も遅くまで寝ている。私が食事を終えて下りてくるとカミさんが「シンジ(仮名)、『シャトル列車、パソコンで見せて』って言ってたわよ」と言う。アレを教えてしまったのか。彼は、私を追いかけて3階まで上がって頼むとまで言ってたそうである。「帰ってきてから見よな」と言うと彼は「はやく、かえって、きてね」と応えるのである。しかし、そのうちに実物を見たいと言いだしそうな気がするんだけどねえ。

今日は昼休みに職場近くの書店で餓狼伝 XII夢枕獏:Futaba novels)が平積みになっているのを見つけて買った。何かもう、10年以上読み続けているような感じがするのは気のせいだろうか。

今日も通勤中に少女の空間を読んでいる。帰りに大塚英志氏「彼女の海岸線」を読み終えた。なかなか良い話だったのだが、パワーが今一つで印象が薄い。

どうも体調が悪い。夕方には寒気がして、熱っぽくなってきた。しかし、今日は打合せが延びたので職場を出たのは20時半である。家に着くと22時近い。しかし今日も息子は私が玄関に入ると階段を下りてきて「しゃとるれっしゃ、ぱそこんで、みせてな」と言う。そうだね、朝ああいう約束をしていたから早く帰らなきゃいけないとは思ってたんだけどね。私が食事を始めるとカミさんは息子を寝かそうとするが、彼は父親に「しゃとるれっしゃ」を見せてもらうと言って譲らない。けっきょく私が夕食を終えるまで待つことになる。22時半になっているのだが、シャトル列車のことを彼に教えたのはカミさんだしねえ。

食事を終えてパソコンを出し、息子に「しゃとるれっしゃ」を見せてやる。キミが乗ったのはどれかな。最初はJR西日本のニュースリリースを見せていたのだが、イマイチ情報量が多くない。探してみると、案の定その他にも写真を撮って上げている人がいる。かなり大きな画像が掲示されているので、車体に何が描かれているのかもはっきりわかる。恐竜やロボットが描かれているのを見て、画像を開くたびに息子は「これ、すごいなー」「こんなん、はじめてやなー」と声を上げる。かなり感動しているようである。これだけ感動させられれば、写真を撮った人も本望なのではあるまいか。ということで、メールを送っておこうか。

息子は件のサイトを見ている間に、マウスのホイールの使い方を発見したようである。指先で転がしてページをスクロールさせている。そうこうしている間に23時になってしまった。カミさんは息子を寝かそうとするが、彼は「とーちゃんと、ねる」と言う。仕方がないなあ。歯を磨きに行くために立ち上がると、カミさんに「甘やかして…」とか言われてしまうのである。まあ、私も疲れていたから寝たい気分ではあったのだよ。



3月7日(水)
昨日は息子と一緒に寝たので今朝は6時に目が覚めた。息子と一緒に寝たとはいえ、昨夜は23時を過ぎていたから6時間ちょっとしか寝ていないことになるし昨夜は体調が悪かったのでまた寝る。けっきょく起きたのは7時半過ぎである。カミさんは出ていったが息子はまだ寝ている。かなり眠いようである。私の布団に引きずり込んで抱きしめても、そのままスースー寝ている。寝るのが遅かったからなあ。せっかく一緒に寝ているのを起こすのは惜しいが、起こさねばならないか。

今日は遠足なので妻子は先に家を出ていった。出勤するまでの間に日記を必死で書いていると、食卓の上に置いていたPHSがブルった。カミさんからである。「雨が降ってきたけど、送っていこうか?」はいはい。日記は間に合わないな、仕方がない。最近、いいペースで更新できていたんだけどなあ。

今日も通勤中に引き続き少女の空間を読んでいる。往きに二階堂黎人氏「アンドロイド殺し」を読み終えた。小道具が古臭くて(わざとやってるんだろうけど)ちょっと読むのに抵抗があったが、なかなか凝った作りの作品でございましたね。帰りには梶尾真治氏「朋恵の夢想時間」を読み終えた。やっぱり梶尾先生の時間モノは良いなあ。

今日は息子が遠足なので、ついでに私の分も弁当を作ってもらえるのである。だいたい、どこの家でもお父さんが弁当を作ってもらえるのは子供のついでだという話なんだな。今日の弁当にはイチゴが入っていたのだが、おでんの大根にイチゴの匂いが移っていて何とも形容のしがたい味になっていた。うにょー、凄まじく玄妙な味である。

今日は20時半まで仕事をしていたし、往きに自転車を使えなかったので帰るにも時間がかかる。家に着いたときには22時近かった。今日は息子は寝ていた。まあ、本来22時前に寝るべきなんだろうね。そして夜中にカミさんがオシッコをさせに行くと、彼はもう漏らしていたのだった。何歳くらいになるとオネショしなくなるもんなんだろうねえ。



3月8日(木)
カミさんが「寝過ごした!」とか言っているので目が覚める。もう8時半近くである。今日は9時半から課内会議があるんだよな。朝飯はあきらめよう。起きてすぐは空腹は感じないのだが、朝飯抜きだと昼前になると猛烈に腹が減る。おかげで昼食はご飯を大盛りにしてもらった。いつも夕方になると腹が減るので、いつもこれくらい食った方がいいのかな。

今日から銀河帝国の弘法も筆の誤り田中啓文:ハヤカワ文庫)を読んでいる。まず「脳光速」だが、何だか普通のSFみたいですな。期待していたものと違うのであんまり楽しめない(って何を期待していたんじゃ?)。普通のSFに見えるわりには「敵」を撃退する方法が発見された経緯が説明されてないのが不満である。まあ、やっぱり普通のSFじゃないんだろうな。次の「銀河帝国の弘法も筆の誤り」は駄洒落小説。しょーもない駄洒落の連発に、電車の中で読んでいて思わず顔がニヤけてしまう。ヘンなヒトだと思われてしまうじゃないか。

今日は夕方から大阪の客先に行く。仕事をしていると懐のPHSがブルった。カミさんからである。会社では私は携帯電話を持っていないことになっているので、給湯室に行ってかけ直す。彼女の第一声が「ごめんなさい」だった。声がうわずって震えている。いったい、何が起こったんだ。息子に何かあったのか。聞くと、息子を迎えに行って保育所に入っている間に車の助手席に置いていた鞄が無くなったと言う。財布とかカードとか電子手帳とかMDプレーヤーとか入っていたという。車上荒らしか。東大阪市は多そうだからねえ。いかにも住人のモラルが低そう…って、オレもそうか。まあ、私は妻子が無事なんで安心した。家族が無事なら多少の金銭的被害や手間くらいはどうということはない、などと思ってしまうのである。カミさんはそれどころではないだろうけど。

しばらくしてカミさんからPHSにショートメールが入った。「リュックの中に『EGコンバット2』が」「くやちい」…あ、そうですか。それがいちばん悔しかったのかも(苦笑)。

しかし今日は寒い。帰りにJRの駅で電車を待っていると、身を切るような風が痛いくらいである。しばらく立っていると、身体の芯まで温度が下がってくるのが身に滲みて分かる。大阪に着いて地下鉄に乗り換えるために地下道に入っても冷たい風がびゅうびゅう吹いている。もう3月だというのになあ。地下鉄に乗って座っていると、座席のわずかな隙間に向かって倒れ込むように座ってくるオッサンがいる。むりやり割り込んできたと思ったら、こっちに寄りかかってくる。何だコイツは……酔っ払いか。

地下鉄を乗り換えて座って本を読んでいると、途中の駅で停まったのはいいが発車しようとしない。どうしたんだろう、とか思いながら本を読んでいると、ホームの前の方で何だか言い争っているような声がしている。何かがぶつかるような音も響いてきた。一つの駅にこんなに駅員がいるのか、と思うくらいの数の駅員が駆けてゆく。そして、駅員に両脇を抱きかかえられた男性がやってきた。私の車両に乗り込んでくる。ハンカチかティッシュのようなものを丸めて鼻を押さえている。そのまま出発するのかと思ったら、駅員が乗り込んできて男性に降りるように言っている。彼は「あんなんにこれ以上関わり合いとうない」とか言っているが、駅員は「いや、血も出てるみたいやし…お話、聞かせてください」とか言ってしばらくやり取りがあった後、けっきょく車両を出て後方に歩いていった。やっと発車である。走りながら争っていたあたりを見ると、太ったオッサンが何かに寄りかかるようにして立っていた。件の男性が「あれぁ、ヤクザや」とか言っているのが聞こえたような気がしたが、普通のサラリーマンのように見えたんだけどなあ。しばらく走っていると、遅れて急いでいたせいか電車が急ブレーキをかけた。前に立っていた男がよろめいて私と隣に座っていた人の膝の上に倒れ込んでくる。彼は私の腕を掴んで起き上がる。おいおい、もうちょっと他人に迷惑をかけない起きあがり方はできんのか。

家に帰ると今日も息子は寝ていた。大阪の客先に行くと帰るのに時間が余計にかかるからなあ。カミさんは黄砂のせいで街行く車がみんな汚れているとか言っている。そうか、今朝家を出るときに自転車のサドルがえらく汚れているなと思ったら、黄砂だったのね。



3月9日(金)
昨日は警察の人が来て事情聴取をしていたので息子はかなり長い間放って置かれたそうなのだが、独りで本を読んで大人しくしていたそうである。カミさんは「親が大変だってこと、わかってるみたい」だと言っている。彼は何でお巡りさんが来ていたのか訊いて理由を言うと「おまわりさん、さがしてくれるよ。げんきだして」とか言ったそうだ。気が利いたことが言えるようになったもんだね。この点に関しては、すでに父親を超えてるかも(おい)。

引き続き今日も通勤中に銀河帝国の弘法も筆の誤りを読んでいる。まず「火星のナンシー・ゴードン」を読み終えた。しかし本当に、このオチだけのためにこの話は書かれたのか……ナンシューこっちゃ。帰りには「嘔吐した宇宙飛行士」である。まあ、本当にこういう話は他人事ではない(笑)。ただ、オチがイマイチ決まってなかったような…。しかし、無重量状態にある宇宙服の中で嘔吐した場合、吸い込んでしまって大変なことになってしまうような気がしていたんですけど、そうではないのかな。まあ、この話では粘着性が高かったようですが、そういう場合ばかりではないように思うんですけどね。

今日は昼休みに人名の世界地図(文春新書)を買った。世界的に人名の由来というのはけっこう興味があるのである。

今日もまた夕方にカミさんから電話がかかってきた。今日は何があったんだ。ひょっとして盗られた鞄の中に大変なものが入っていたとかカードか何かが悪用されて大損害が出たとか、不安の種には事欠かない。今日もコソコソと電話をかける。彼女は熱を出したそうである。吐いたら少し楽になったらしいが。それは早く帰らねばなりませんな。カミさん一人ならどうにでもなるが、子供がいるからねえ。テストしていた処理がうまく動いてなかったのだが、定時で帰らせてもらうことにする。今日も大阪の客先に応援に来ていたのだが、来週も来なければならないか。

早く帰らねばならないのでJRの駅までバスを使ったのだが、来るのが遅れた上に駅の近くで渋滞に巻き込まれて全く進まなくなってしまった。これじゃ、歩いた方が早かったかもしれない。世間と同じ時間に帰ろうとすると、こういうことになるわけね。帰りには土日に観るためのヴィデオを借りるつもりだったが、選ぶのにも時間がかかるので断念する。明日の朝食のパンが無いと言っていたのでスーパーに寄って買っただけである。

家に着き、カミさんを寝かせて私が息子の相手をする。彼は「ゆき、みずになったなー」とか言っている。そうか、雪が降ったのか。カミさんも雪の中免許の再発行に行って体調を崩したとか言ってたからなあ。カミさんによると保育所の子供たちは喜んで犬の子のように走り回っていたらしい。子供は元気である。

息子に飯を食わせてしばらくすると、彼は「うんち、でた…」とつぶやいた。あやや、それは大変だ。これまでの経験からして完全には出ていないだろうから、早くトイレに座れ!  トイレの前まで行かせてズボンとパンツを脱がせるが、汚れている様子がない。便座の上でも彼は気張っているが、ウンチが出たようにも見えない。気張るたびにオシッコがチョロチョロと出るのみである。彼も途中から腹圧をかけると尿が出てくるのを見るのが目的になってしまったようである。「おしっこ、さんかい、でたなー」とか言っている。んじゃ、ウンチが出たと言ったのはガセだったのかい?

息子がパソコンで将棋をしたいというのでいじらせていたら、私は横で寝てしまっていた。気がつくと23時半である。あやや、明日は一人で起きて息子を保育所に連れて行かねばならないのになあ。いやいや、それよりも息子をこんな時間まで起こしていた方が問題か。



3月10日(土)
隣で寝ていた息子が起き上がった。7時過ぎである。何でこんなに早く起きるかね。昨夜は寝るのが遅かったというのに。彼を追いかけて階下に下りてゆくと、トイレから出てきた彼は「もういっかい、ねる」と言った。そうか、オシッコに起きたのか。今朝は漏らしてないようである。偉いぞ。私が用を足して寝室に戻ると、彼はちゃんと布団の中に納まっている。成長したもんだなあ。しかし私が着替えはじめると、彼は「ぼくも、おきる」と言って起き上がったのだった。そっか、じゃ一緒にご飯を食べようかね。母ちゃんを起こしちゃいけないぞ。

食後に着替えさせていたら息子が「うんち」と言った。トイレに連れて行き、便座に座らせる。ウンチは出たようだが、彼はなかなか終わったと言わない。トイレは寒いので付き添っているのも大変だ。けっきょくそれ以降ウンチは出なかったが、最初に立派なモノが出たようだ。

息子を保育所に連れてゆく。今日の彼は別れぎわに「かえりは、かーちゃんが、いい」とか言いだした。何なんだ。半日会わなかっただけで、もう母親が恋しくなるのか。父親なんて哀しいモンじゃのう。今日、彼は涙をポロポロ流しながら保母さんに抱かれて別れたのであった。

昼過ぎになってカミさんが起きてきた。明日の準備をするとか言っている。明日は大阪でイベントなのである。おいおい、行くんですか大丈夫ですか。まあ、それが生きる目標みたいなもんですからねえ。彼女によると、息子は昨夜独りで寝るために寝室に上がってきたが、母親に言われてもう一度下りてから父親と一緒に上がってきたらしい。ううむ、私が寝てる間にそういうことがあったのか。ぜんぜん知らなかったな。

夫婦二人でネットサーフィンしていると、電話がかかってきた。受話器を置いた彼女が「あちゃー」とか言っている。息子が38.5度の熱を出したそうである。あらあら、それは大変だ。カミさんが迎えに行くと言う。私が行こうかと言ったのだが、車で行った方がいいだろうということである。まあ、息子のことを考えればそれがいいんでしょうけど、大丈夫っすか? 彼が早く帰ってくるなら、今日は私も自分の用事はできないな。

私も体調が悪くなってきた。寒気がして背中が凝っている。夕食後に体温を計ると37.3度である。うーん、病弱な家族であるな。明日カミさんはイベントに行くとして、父子で一日中寝ていられるならいいけど、息子だけ元気だというのが最悪のパターンだな。今夜は一家3人で早めに寝るのである。

狼谷辰之  新書館ウィングス文庫
なる
¥620+税  ISBN4-403-54021-X



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